その方は講演会の中で、「賢い患者になって、医療者とともに医療を変えよう!」と言っていました。
私はそのとおりだと思いました。医療は病院の中からだけでは変わらない、病院の中と外、双方から変えていくものだ。そして、人の言葉はこんなにも心に響くものかと感動したのです。
以来、私は病院の外で、人生の最期のすごし方について、講演活動をしたり、SNSなどで発信するようになりました。
「人生の主人公は自分」であるのだから、最期までのすごし方を家族と話し合っておいてほしい。
そして、それを叶えるための知識と技術の提供、分かち合うコミュニティ形成のために全国に講演に行ったり、看取りについて語るトークイベントを開催するようになりました。
このイベントに参加したあとで看取りを体験した人から、
「心の準備ができていたから、穏やかに看取ることができました」
という報告をいただいたこともあります。
看取ったあとにイベントに参加し、
「もっとああしておけばよかったとずっと後悔していたけれど、あれでよかったのだと考え直すことができました」
と言ってくれた人もいました。
そんなたくさんの方の声に後押しされて、私は今回、私自身が遭遇したり見聞きした実例をもとに、後悔しない看取りのためにできること、最期までの時間の幸せなすごし方、延命治療についての考え方などを『後悔しない死の迎え方』という一冊にまとめてみました。
私は、みながみな、「いい人生だった」「あんな最期いいよね」と思えるような「死とうまくつき合う時代」にしていくことが自分に与えられたミッションだと思っています。
この本が、幸せな最期を迎えるためのヒントになってくれれば、そして、ご家族をはじめとする看取った人の心の癒しになれば、著者としてこの上ない喜びです。