「Cさんの教育を担当することになりましたAです。これから一緒にがんばっていきましょう。困ったことがあったらいつでも相談してください」

 Aは笑顔でウェブ画面に映るCに向かって話しかけた。

「はい…」とうつむき、小声で返事をしたCにAは「大丈夫かな?」と感じたが、その時は深く気に留めなかった。

 ところが2週間が過ぎ、AはCの指導方法に自信がなくなり悩んでいた。おとなしい性格のCは、業務の説明をしても反応が鈍く、また同じ内容の質問を繰り返すことが多かった。その様子にイラっときたAは、Cに向かって「同じことを何回も聞かないように」注意をし、配布したマニュアルを読み返す、Aの説明中にメモを取ったり録音をする等の対処方法を提案した。

 しかし、効果はなかったので、チャットで詳細な指導を行うようにもした。また、Cと何とか仲良くなりたいと考えたAは、仕事時間の合間に自身の趣味や女性の好みなどプライベートなことを話しまくった。そしてCが最近彼女と別れたことを聞くと、

「俺も最近彼女に振られちゃったんだよ。だから俺たちは同士だな」

 などと勝手に盛り上がり、以後何かにつけてその話を持ち出して二人の連帯感を強めようとした。しかしコロナ禍前までの新入社員と違い、Cには手応えが感じられなかった。

一方、新人CからAはどう見えていたか

 一方のCは、Aの指導に対してかなり心理的負担を感じていた。Aは画面上では気さくな雰囲気だが、説明の際言葉が早口で聞き取りづらく内容の理解に苦しんだ。そこで仕方なく質問すると、

「僕の話、聞いてなかったの?」

 と言われ、露骨に嫌な顔をしている様子が映った。

 またチャットでの指導も長文の上「もっとしっかりやって!」「ちゃんと人の話、聞いてる?」等、辛らつな言葉も多く、Cは毎日その文を読むたびに、

「自分はそんなに出来が悪いのかな…」と気がめいった。

 そしてCが最も嫌だったのが、仕事の合間にAのプライベートな話を聞かされることだった。渋々応じていたが、つい、1カ月前に彼女と別れたことを話すと、Aが何かにつけてそのことを持ち出してきた。例えばAに注意されてシュンとしていると、

「ちょっと注意されたくらいでそんなに暗い顔してるから、彼女に振られちゃうんだよ。Cちゃん!」

 などとからかわれた。