管理会社の“もうけ”も考慮しながら
バランス感覚を持った管理組合を目指す

 ところで、管理会社は管理委託費だけで利益を得ているわけではない。大規模修繕工事をはじめとするマンションの修繕工事も、管理会社の大きな収入源となっている。

 マンション管理業界において、独立系のトップクラスといえる日本ハウズイングを例に見てみよう。同社のホームページに掲載されている売上高や利益に関する株主向けの情報によると、売り上げの44.1%はマンション管理業務によるものだが、42.3%は修繕工事による売り上げ(ホームページ上の表記は営繕工事業)となっている。

 このように、修繕工事が管理業務と同程度の売り上げを占めているのは、同社に限らず、大手の管理会社ならどこでも共通する状況だと思われる。

 こうした収益体系の管理会社の場合、管理委託費ではもうけがあまりなくても、大規模修繕工事や小修繕工事が受注できるかどうかが大きなポイントになってくる。ここで、皆さんも管理会社の経営者になったつもりで考えてみてほしい。

・管理業務の利益率が(A.高い B.中程度 C.低い)
・修繕工事の利益率が(a.高い b.中程度 c.低い d.受注できない)

 この場合、契約先として一番いいのはA-aの管理組合で、一番遠慮したいのはC-dの管理組合になる。経営者として考えるなら、A-aの管理組合は上得意のお客様で、絶対に逃したくない契約先だ。

 また、管理業務の利益率が高いということは、多少最低賃金が引き上げられても影響が出ないくらい余裕のある管理委託費をもらっていることになり、そもそも管理委託費の値上げを申し入れる必要がない。

 反対に、やっかいなのはC-dの管理組合で、そのままでは会社の経営にも影響が及ぶ可能性が高い。そこで、1.のようにリプレイスのお世話をしてでも手放すか、2.のように強気の値上げ交渉に出るか、経営者として判断する必要が出てくる。

 管理組合の立場に戻って考えてみると、自分たちがA-aの管理組合ということは、管理会社の“食い物”にされているということになる。一方、自分たちがC-dの管理組合の場合、管理会社にとってはまったく“うまみ”のない相手であり、ある日いきなり管理会社から高額な値上げを要求されたり、契約解除も辞さないという強硬な態度に出られたりする可能性が高い。

 私のところに相談を寄せてきた管理組合の中に、総戸数250戸のマンションで、それまで年間700万円の管理委託費だったのが、管理会社から年間1300万円への値上げ要求が出されたところがある。

 確かにそのマンションの管理委託費は相場よりも相当安く抑えられており、昨今の最低賃金の上昇を受けて、ついに耐えられなくなった管理会社が値上げの申し入れをしてきたというケースだ。このマンションは前述の区分でいえばCに該当する管理組合だったため、管理会社もかなり強気の姿勢で値上げを持ちかけてきたのである。

 管理会社は営利企業であるため、もうけがなければ当然離れていってしまう。そのため、管理組合も「管理会社にもある程度もうけさせる」という考えを持っていることが大切である。しかし、だからといって、当然A-aの管理組合になる必要はない。

 あくまでも管理委託費は適正な金額で契約しつつ、たとえば大規模修繕工事は他社との相見積もりにするが、小修繕工事は管理会社に発注するなど、バランス感覚を持った付き合い方をしていくべきだ。できれば、B-b~C-cあたりの管理組合を目指すのが理想的だろう。