商品市場が、久方ぶりの“上げ相場”にわいている。年初来、銅価格は2月13日時点で11%上昇。商品価格の先行指標とされるバルチック海運指数は、同147%の上昇である。

 銅は、中国が備蓄増に動いているという観測が材料だ。実際、上海の銅在庫は、1月半ばの約1万6000トンから約3万4000トンまで増加した。バルチック海運指数の上昇は、「中小の精錬所がスポットで鉄鉱石の輸入を再開したため」(海運関係者)と見られる。

 金以外の行き場を探し始めた投機資金も、これらの動きに注目しているようだ。「ファンド勢などで、年末まで続いていた売りを手仕舞う動きがあったと推測される。世界最大の需要国である中国で備蓄のウワサが出れば、市場は敏感に反応する」(平山順・日本先物情報ネットワーク主任研究員)。むろん、4兆元の景気刺激策による需要拡大への期待も背景にあろう。

 商品相場が底を打ったという点では、市場関係者はおおむね一致している。ただし、実際に需要が回復し、今後上昇に転ずるかといえば、疑問視する向きが多い。

 中国の銅備蓄増も「単に買い控えで低下していたぶんを安値に乗じて埋め合わせているのか、インフラ投資のためなのかは不明」(住商アセットマネジメント証券の鈴木直美氏)なのだ。

  同国の1月の銅製品輸入量は前月比▲19%、銅スクラップ輸入量は同▲57%。これは、建設や機械生産の低調を示唆する。バルチック海運指数も、「大手の契約が動かないと、本格的な上昇にはつながらない」(海運関係者)状況だ。

 世界指標となるロンドン金属取引所の在庫は、高止まりしたままだ。頼みは中国経済のみだが、結局それも期待先行というのが実情である。

(『週刊ダイヤモンド』編集部  河野拓郎)