先行きが不透明なコロナ渦。変化に対応すべきなのはわかっているが、具体的にどうすればいいのか?
そんな人に読んでほしいのが、東大卒プロゲーマーときどさんの著書『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』だ。本書では、格闘ゲームの環境の変化によって、全く勝てなくなったときどさんのV字回復の軌跡を紹介。「圧倒的に変化が激しい」eスポーツの世界で戦うために必要なことを突き詰めていくと、ビジネスの世界でも応用できるエッセンスが見えてきた。
(こちらは2021年3月の記事を再掲載したものです)

「なんでも自分でやろう」とする人が仕事で成果を出せない根本原因Photo: Adobe Stock

自己流勉強法はゼロ、全部「予備校式」

 努力する目的がはっきりしていると、ムダなこともはっきりします。目的にとって不要なことを切り捨てると、意外とやることは少ないな、と気づき、優先順位もつくようになります。頭の中の整理整頓です。

 整理整頓ができると、今度は自分以外に肩代わりさせられるものが見えてきます。これを使わない手はありません。いわゆるアウトソーシングです。

 典型的なものが、受験対策における予備校です。僕も利用させてもらいました。彼らには大量のデータと実績がありますので、今やることできることを提示してくれます。合否判定や、対策すべき科目などの分析はまるっと肩代わりしてもらいました。集中できる自習室は、ほとんど毎日使っていたくらいお気に入りでした。

 登山でいうなら熟練のシェルパに先導してもらい、荷物も持ってもらう。僕は正しいペースで歩くことだけに専心できるわけです。

 そこまで指導を丸呑みして失敗したらどうするのか、と心配な人もいるかもしれません。確かに、合格するかどうかは選んだこちらの責任ですので、そこは慎重にやりました。そして、任せたからには異論は差し挟まずに、アドバイス通りに受験対策を進めていきました。アウトソーシングで大事なのは、「頼む範囲をしっかり決めて、相手の領域には絶対に口出ししない」ことだと思います。

 勉強しながら「自分の感じ方と違うなあ」と思うことがあっても、プロがいうのならそうだろうと素直に受け取っていました。実際、予備校は受験のプロ。初心者の僕より経験も実績も豊富なのだから、文句をいう筋合いもありません。ただし、これで万が一不合格なら、それこそ訴えるくらいの気持ちでいました(というのは冗談ですが、そのくらいの気持ちで、お任せしたのです)。

何をアウトソーシング「しない」のか

 一方、プロゲーマーになったばかりのころは、どんな小さな雑務も何から何まで一人でやっていました。スポンサードして欲しくて手当たり次第に営業のメールをし、初めて自分で取ったスポンサーは、アメリカの小さなTシャツ屋さんでした。うれしかったですね。その他にも渡航のためのチケットの手配や確定申告、契約書の作成など、やらなければいけないことはたくさんありました。

 現在の僕は、筋力トレーニングはトレーナーに、納税については税理士に、契約関係はマネージャーに全て丸投げしています。反対に、ゲームに関わること=どの試合に出るか、どのスポンサーと一緒にやるかなどは全部自分で決めます。もし、そのような内容をマネージャーに丸投げしてしまうと、「お金のために、この仕事を受けよう」ということも出てくるかもしれません。これは僕のマネージャーが悪いのではなく、立場の違いなので仕方のないことです。

 こうした自分の「価値観」に関わる部分までアウトソーシングしてしまうと、「何のために働くのか」の目的がブレてしまう。アウトソーシング「する」「しない」の境目を決めることで、自然に自分の仕事の本当に大事なことが見えてくるのです。

(※この記事は『世界一のプロゲーマーがやっている 努力2.0』からの抜粋です)