日本で最初に院政を始めた天皇

 そして、大宝律令(701)に藤原不比等に命じて、太上天皇は天皇と同格ととれる文言をこっそり潜り込ませて政治を行っていた!

 だから日本で最初に院政を始めたのも持統天皇なのです。
「太上天皇」と呼んでいますが。

 ここから日本の天皇は、幼くてもその代わりをする人がいればいいのだということになったのです。奈良時代はだいたい持統天皇のような女性上皇。
 その後は、外祖父藤原氏の摂関政治。その後は院政という形で、お父さんが権力を握り、天皇は幼くてもいいという伝統がずっと続き、天皇が実際に権限を握ることはなくなっていきます。

 日本の長い歴史を見たら、現在の、上皇陛下がおられて天皇陛下がおられる姿が、実は正常なのです。

 それが天皇の歴史ですが、今の日本の議論で注意しなければいけないのは、過去どうだったかということと、今の天皇制は何の関係もないということです。

 今の天皇制は、憲法という日本の最高法規で、天皇の地位は主権の存する日本国民の総意に基づくと規定されています。天皇制をどうするかは、みなさんの意思にかかっているわけです。

 それは歴史的な天皇制とは関係がない。

 歴史的な天皇制で女性は少なかったとか、男系だという人もいますが、それは歴史の問題であって、今の天皇制とは何の関係もない。

 憲法では「日本の天皇制は国民の総意に基づく」とあるので、みなさんの総意がこれからの天皇制をつくっていくのです。

 過去の歴史を参考にするのはいいことかもしれませんが、過去と現在の法制とは何の関係もないということがこの問題の基本だと思います。

 以上で僕の講義は終わります。
 ご清聴ありがとうございました。

 過去の僕の『哲学と宗教全史』全連載は「連載バックナンバー」にありますので、ぜひご覧いただき、楽しんでいただけたらと思います。

ここ最近、妙に読まれている、人気記事

☆ 【出口治明学長】日本一賢い天皇と日本一賢い部下の最強コンビが救った日本の窮地
【出口治明】日本は鎖国ができて中国は鎖国ができなかった理由
【出口治明】なぜ、仏教は「538年」に伝来したのか?
【出口治明】日本の出生率を上げるたった1つの方法