スーパー冷蔵庫の使い方

 スーパー冷蔵庫との暮らしはこんな様子だ。


 冷蔵庫を開けると、中にはすぐに食卓に並べられる食材が収まったガラス容器がたくさん並んでいる。ある容器には洗ってカットしたブロッコリーが入っている。カリフラワーやセロリ、パプリカ、玉ねぎなども同様だ。調理済みのキヌアが入った容器もある。新鮮な果物やゆで卵は軽食用だ。全脂無糖ヨーグルトに何種類ものザワークラウト、マスタードなどの調味料も各種常備している。

 スーパー冷蔵庫の眺めは美しい。だが大切なのはそこではない。

 私たちは、健康的な食材のたくさんの選択肢がすぐに目に入るようにデザインし直したのだ。

 冷蔵庫にあるものなら、いつでも、何でも、好きなだけ食べてかまわない。ただし、食事の行動計画に反するような食べ物は冷蔵庫に入れないことにしている。


 私たちは毎週買い物と準備に時間をかけ、スーパー冷蔵庫の機能を維持している。

 毎週日曜日に冷蔵庫を刷新するたびに、私はその光景にしばらく感嘆してしまう。まるで雑誌から抜け出してきたような眺めだからだ。じつに美しい!

 次のステップは少しつらいかもしれない。せっかくの美しい冷蔵庫を台無しにしなければならないからだ。だがこれは非常に重要なステップだ。準備した素晴らしい食材はすべてその週のうちに消費しなければならないのだ。何も捨ててはいけない。できるだけ、すべての容器を空にすること。

 スーパー冷蔵庫を毎週整えるには時間も労力もかかるが、その投資はすぐに報われる。

 急いで昼食を取らないといけないときは、冷蔵庫からいくつか選べばそれでおしまいなのだ。

 急に軽食がほしくなったときでも(たとえ夜中でも)、スーパー冷蔵庫を開ければ好きなものを何でも取り出せる。

 それでもまだ足りなかったら? またスーパー冷蔵庫に戻ってちがうものを選べばいい。どれも体にいい食べ物ばかりだ。かならず何かがある。意志の力に頼る必要もない。

 スーパー冷蔵庫のおかげで体重を減らし、よく眠れるようになり、良質なエネルギーを得られるようになった。

 スーパー冷蔵庫を始めたばかりのころは試行錯誤があった。まるでうまくいかないこともあった。だが私たちは、健康的な食生活を追求するうえで、冷蔵庫をいちばんの盟友にすることを学んだ。

(本原稿は『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』(BJ・フォッグ著、須川綾子訳)からの抜粋です)

BJ・フォッグ(BJ Fogg, PhD)
スタンフォード大学行動デザイン研究所創設者兼所長
行動科学者
大学で教鞭をとるかたわら、シリコンバレーのイノベーターに「人間行動の仕組み」を説き、その内容はプロダクト開発に生かされている。タイニー・ハビット・アカデミー主宰。コンピュータが人間行動に与える影響についての実験研究でマッコービー賞受賞。フォーチュン誌「知るべき新たな指導者(グル)10人」選出。スタンフォード大学での講座では、行動科学の実践により10週間で2400万人以上がユーザーとなるアプリを開発、リーンスタートアップの先駆けとして大きな話題になった。教え子からインスタグラム共同創設者など多数の起業家を輩出、シリコンバレーに大きな影響を与えている。『習慣超大全──スタンフォード行動デザイン研究所の自分を変える方法』はニューヨークタイムズ・ベストセラーとなり、世界20ヵ国で刊行が進んでいる。

須川綾子(すがわ・あやこ)
翻訳家
東京外国語大学英米語学科卒業。訳書に『EA ハーバード流こころのマネジメント』『人と企業はどこで間違えるのか?』(ともにダイヤモンド社)、『綻びゆくアメリカ』『退屈すれば脳はひらめく』(ともにNHK出版)、『子どもは40000回質問する』(光文社)、『戦略にこそ「戦略」が必要だ』(日本経済新聞出版社)などがある。