朝すぐに仕事をスタートさせるための「ある儀式」Photo: Adobe Stock

集中力が落ちた。
あの頃は、もっと没頭できたのに──

私たちは今、スマホやPCに1日平均11時間を費やしていたり、リモートワークによる働き方の変化に追われていたりします。
「人のパフォーマンスを可視化するメガネ型デバイス JINS MEME」「世界で一番集中できる空間 Think Lab」などを手掛けてきた井上一鷹氏の著書『深い集中を取り戻せ』では、集中のプロとして、「これからどのように働けばいいのか」「どうやってパフォーマンスをあげるのか」を語ります。
脳科学的に、「やらされ仕事は4ヵ月しか続かないけれど、やりたいことは4年続く」と言われます。あなたが、夢中で何かに没頭できた体験。やらされ仕事ではなく、自らやってみようと思えたこと。何が原因かわからないけど、いつの間にか、『深い集中』が失われたすべての人へ、ノウハウをお伝えします。

「仕事への入り口」をつくろう

 私のある友人は、独立した初日の感覚について、このように話します。

 “強制的に出社時間が決められていたときは、無理やり自分のスイッチを入れられていた。でも、それがなくなってからは、「自分の意志の力」で仕事を始めることになった。これって、思ったよりも意思決定のリソースが必要でつらいものなんだ……。”

 このようなことを感じたそうです。

 そして、そこから15年以上、個人経営を続けた結果、行き着いた方法は、「朝、仕事用のジャケットに着替えて、家であってもそれを着る」という方法でした。

 私の場合も、この友人のマネをして、「仕事モードの服を着る」「腕時計をする」という2つを義務化しています。

 特に、腕時計はおすすめで、パソコン作業をしているときをはじめ、常に自分の手元は視界に入ってくるので、その光景だけで仕事の頭に切り替わります。

 このように、ルーティンを作っておくことは、主体的に働く上で必要なことです。

 それ以外にも、朝、私は次のようなことをしています。

・45℃の湯船に浸かる
・必ずヒゲを剃る
・メンバーと朝礼と夕礼をして小話をする

 朝が弱い人には特におすすめなのですが、熱めの風呂に入ることで体に強い刺激を与えることができます。

 その刺激によって、「コルチゾール」というストレスホルモンを分泌させ、血糖値と血圧を上げることにより、脳を覚醒させることが目的です。

 自分に合わせて温度を変えたりしたほうがよいでしょうが、朝の集中の立ち上げには確実に役立っています。また、そのときにヒゲを剃るようにもしています。

 45℃の風呂とヒゲを剃るという行為は、五感への刺激にもつながることです。これを脳に印象づけることで、「仕事に入るタイミングだ」という合図になるようにしています。

 また、仕事のチームでは、「朝礼」と「夕礼」を欠かさないようにしています。

 仕事開始と終了のタイミングをチームメンバーと共有することで、「自分たちは仕事をするんだ」という共有感を作るのが目的です。

 これは、リモートワーク時代には大切な儀式だと思います。

 遠隔で仕事をすると、どうしても孤独感や、心理的安全性が奪われる感覚があります。

 同じ時間から同時に仕事を始めることをお互いに確認すると、「もしかしたら仕事してないと思われているかも……」というような猜疑心も取り除かれます。

 ぜひ、こうした仕事への入り口のルーティンをチームで作りましょう。

井上一鷹(いのうえ・かずたか)
株式会社ジンズ執行役員 事業戦略本部エグゼクティブディレクター 兼 株式会社Think Lab取締役
NewsPicksプロピッカー(キャリア)
大学卒業後、戦略コンサルティングファームのアーサー・D・リトルにて大手製造業を中心とした事業戦略、技術経営戦略、人事組織戦略の立案に従事後、ジンズに入社。商品企画部、JINS MEME事業部、Think Labプロジェクト兼任。算数オリンピックではアジア4位になったこともある。
著書『深い集中を取り戻せ』(ダイヤモンド社)が好評発売中。