歯周病Photo:PIXTA

 毎年6月4~10日は「歯と口の健康週間」だ。

 最近は乳幼児からの歯磨き習慣が定着し、子どもの虫歯は減少。2018年の歯科疾患実態調査によると、虫歯がある12歳児の割合は1993年の87%から10%へ激減している。

 ところが、25~85歳未満の成人では8割以上が、35~55歳未満では、ほぼ100%が虫歯持ちだ。また、歯周病の自覚症状がある人の割合は、25~65歳未満のおよそ15%だった。忙しさにかまけて歯科受診は二の次なのだろう。

 歯周病は歯と歯肉(歯茎)の隙間から、プラーク(歯垢)に潜んでいたP・ジンジバリス菌(Pg菌)などの細菌が侵入し、歯肉に炎症を引き起こす疾患。歯を支える歯槽骨に炎症が進むと、歯肉から出血する、歯がぐらぐらするなどの自覚症状が現れる。

 雑な歯磨き、喫煙などが発症リスクで、口腔内のみならず脳・心疾患や腎臓病、アルツハイマー型認知症(AD)など、全身性の疾患との関連が指摘されている。

 特にADについては、慢性的な歯周病持ちでは発症リスクが2倍に上昇するほか、Pg菌が産生するタンパク質分解酵素「ジンジパイン」が脳内で炎症を起こし、AD発症を促すことが報告されている。実際、この酵素の働きを阻害するAD治療薬が開発中だ。

 また、日本人を対象とした調査では、「重度の歯周病」がある認知症の後期高齢者は、「歯周病なし~軽症」の人と比べて、認知症関連の治療費がおよそ4倍高額だったという報告もある。因果関係は明らかではないものの、気になる話だ。重症化を予防できるうちにセルフケアを徹底したい。

 まず、次の自覚症状がある方は歯科を受診し、診断と治療、歯磨き指導を受けてみよう。

(1)起床時に口のなかがネバネバする、(2)歯磨きのときに出血する、(3)硬いものがかみにくい、(4)口臭が気になる、(5)歯肉がときどき腫れる、(6)歯肉が下がって歯と歯の間に隙間ができてきた、(7)歯がぐらぐらする――どうだろうか。

 ここで「別に痛くないから」と放置はしないこと。後々予想外の医療費がかかりかねない。

(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)