我慢慣れの副作用?
将来の夢を持たない日本の若者

 世界で6億9000万人が利用するビジネス向けSNS「LinkedIn」が、カナダ、アメリカ、イギリス、オーストラリア、中国、シンガポールなど22カ国に住む18~65才までの3万人以上を対象に調査を行ったところ、日本人に顕著に見られる特徴が浮かび上がった(参照:仕事で実現したい機会に対する意識調査)。

 仕事で関心を持っている機会について質問をしたところ、参加国全体で見ると、「ワークライフバランスが取れている」「自分が大好きなことができる」がそれぞれ40%で同率1位だった。国別に見ても同様の傾向が見られたが、日本だけは違った。

「ワークライフバランス」は他国と同じく1位だったが、次に僅差で多いのが「友達や家族と充実した時間を過ごす」。「自分が大好きなことができる」は他国と比べて極端に少なく、「雇用の確保/安定性」(32%)「身体や精神をアクティブに維持」(30%)よりも低い29%にとどまったのである。

 この調査から浮かび上がる日本人像は、他国の人に比べて、「自分が大好きなこと」を諦める、つまり自分の気持ちをグッと抑え込んで我慢している姿だ。筆者にはこれが、数々の困難を我慢で乗り越えてきたことの副作用のように感じてしまう。

「考えすぎでしょ」と思うかもしれないが、同様の結果を示すような調査は他にもたくさんある。例えば、日本財団が、2019年9月下旬から10月上旬にかけて行った「18歳意識調査」というものがある。インド、インドネシア、韓国、ベトナム、中国、イギリス、アメリカ、ドイツと日本の17~19歳それぞれ1000人を対象に、国や社会に対する意識を尋ねたもので、その中で興味深いのが「将来の夢を持っている」という質問だ。

 若者が夢は抱くことは、人種・宗教・社会構造を問わず文明社会に共通する普遍的な現象だろう。実際、調査した8カ国では82.2%~97%という高い水準となっている。しかし、なぜか日本だけはガクンと落ち込んで60.1%。つまり、日本の17~19歳の4割程度は「将来の夢がない」という状態なのだ。

 これはよくおじさんたちが嘆く「最近の若者は覇気がない」という類の話ではなく、若者側はまったく悪くない。幼い頃から、自分の好きなことを我慢するように「教育」をされてきた結果に過ぎないのだ。