お金持ちとは相対的なものです。自分よりお金を持っている人がお金持ちです。ほとんどの人よりもお金を持っている人がお金持ちです。ところが私たちは、多いほど豊かという通説の嘘をすでに暴きました。多いとは蜃気楼のようなものです。実在しないため、決して到達することができません。

 ジョン・スチュアート・ミルはかつてこう言いました。「人はお金持ちになりたいのではなく、ほかの人よりもお金持ちになりたいだけだ」。つまり、私たちの誰もがお金持ちになれたときには、すでにお金持ちではないのです。

 お金との関係において自分で舵取りができるようになったとき、真の経済的自立の最初の定義がわかり始めます。私たちが定める定義は、お金持ちの定義という解決不能な難題とは切り離されたものです。

 経済的自立とは、あなたがお金持ちかどうかとは関係ありません。十分なもの――プラス少しのぜいたく――を持つという経験のことです。

 十分とは満足度曲線の頂点のことです。定量化できるものであり、本書のプログラムのステップに従うことで、自分なりに定義できるものです。いつまでもお金持ちであり続けるという、経済的自立の古い定義は達成不可能です。十分は達成可能です。

 あなたにとっての十分は、隣の人にとっての十分とは違うかもしれません。ただ、あなたにとってはリアルな数字であり、あなたの手に届くものです。

経済的自由と精神的自由

 十分(と少しのぜいたく)を経験するための最初のステップは、自分の心を解放してあげることです。そうするまでは、いくらお金を貯めたところで、あなたが解放されることはありません。

 十分を経験することで、お金にまつわる無意識の思い込みから解放され、お金の問題から感じていた罪悪感、怒り、妬み、フラストレーション、絶望からも解放されます。そうした負の感情を再び感じることもあるかもしれませんが、服と同じように、いつでも好きなときに脱ぎ捨てることができます。

 子どものときに親や社会から受け取ったメッセージ――成功するため、尊敬されるため、道徳的であるため、安泰であるため、幸福であるために、どのようにお金とかかわるべきか――に縛られる必要はありません。