上海に住む筆者の友人(30代後半の女性)には、小学校5年生の娘がいる。その子は、1週間のうち自由な時間があるのは、日曜日の夜だけだという。それ以外は、全ての曜日が宿題とピアノ、英会話、水泳、絵画などの習い事で埋まっている。

 それだけ多忙な子ども自身の苦労もさることながら、親の負担も大きい。友人は、祖父母の手伝いでなんとかやりくりできているが、「とても疲れている、命を削っている感じだ」といつも嘆いている。それでも「今は頑張らないと、将来はもっと大変だから、歯を食いしばってもやり遂げる」という。

 住宅ローンや子どもの教育費の支払いに追われる日々。独身のときにはいつもおしゃれで、洋服好きだった彼女は、「今はもうそんな余裕がない。古い服を着回している」と愚痴をこぼす。

 中国では女性が働くのはごく普通、当たり前である。専業主婦は、中国語で「家庭主婦」と呼ばれるが、現在はもはや死語に近い。近年、一部の富裕層家庭で妻が仕事をやめて子どもの教育に専念することがあるが、あまりうらやましがられない。

 なぜなら、「女性はやっぱり自分の仕事を持つべきだ。いくら夫の稼ぎが多くても、いつか夫に浮気され捨てられるリスクがあるから、しっかりと経済的に自立して、自分の人生を自分の力でコントロールすることが一番だ」というのが、多くの中国人女性が持っている考え方だからだ。ゆえに、母親は、子どもの教育に神経を削るだけでなく、職場でもしっかりキャリアを積んでいかなければならない。このような状況では、とても2人目の子どもを持つ余裕がない。

「不動産価格と教育費は、一番効く避妊薬だ」――。これは、近年中国のちまたで流行しているフレーズである。

結婚できない男性
農村部に偏り

 また、結婚したくても出会いがない人も多い。中国では「剩男(センナン)」、「剩女(センニュイ)」という言葉がある。「剩」は余るという意味で、結婚適齢期が過ぎても未婚の男女を指す。

 冒頭の国勢調査によると、中国の男性人口は女性より3490万人多い。しかし、上海や北京などの大都会では、女性の数が男性より多くなったという統計もあり、「男性が売り手市場」の状況である。

 一方で、結婚できない男性はほとんど農村部に偏っている。中国は都市部と農村部の生活格差が大きいため、都市部で教育を受けて育った女性は、農村に生まれた男性とは価値観や生活環境がまるで違うのだ。昨年、ある中国国内の専門家は、「都会の女性と農村の男性をマッチングすれば解決できる」と提案したが、これには批判が殺到し、SNS上で炎上した。それも当然であろう。