施工費用を効率的に圧縮しつつ、いい建物はできないか?
次に賃貸運営経費(OPEX)を圧縮できるかどうかを検討してみよう。エレベーターは本当に必要だろうか? 3階建てまでの建物であれば大抵は必要ないだろう。
ただし、プレミアム家賃を取るデザイン特化型の建物なら家賃を上げるほうが有利なのでエレベーターはつけるべきだ。
総投資額のコントロールでも、Creating αの法則が使えないだろうか?
・施工費用を効率的に圧縮しつつ、いい建物はできないだろうか?
・土地価格を買主も受け入れやすい価格に値引きできないか? それも理論的に。
・やみくもに建設費をケチることなく、高付加価値を生んでくれる建設手法は?
下の図は、建設コストと収益のバランスを簡単に比較したものだ。
図の左側の超ペンシル型の9階の建物はボリュームが一見大きく家賃の入りも大きいが、ローン後キャッシュフロー(CFAF)は732万円で総開発費用は1.9億+土地代5000万円にのぼる。
対する地下1階地上5階の建物の場合は、杭工事も必要なく建設コストが効率的に圧縮されて総開発費用(TDC)は1億円+土地代5000万円に抑えられる。
満室時家賃収入(GPI)も少なくなるが、ローン返済を加味したローン後キャッシュフローは642万円だ。意外とローン後キャッシュフローに差が開かずに投下資本を効率圧縮できていることがわかる。
この投家資本の詳細については建設費用や設計費用、取得時の諸経費や税など専門家でないと正確には割り出せないものが多い。
また賃貸運営経費(OPEX)についても、各業者に聞けばわかるものが大半だが、BOE分析をするには、総開発費用や賃貸運営経費についての数字的感覚はもっておいたほうがよいだろう。
開発については不動産企画ができる設計事務所をパートナーにすることが近道だが、まずは上の図表で伝える概算法を手元参照しながら、さっとプロデューサー大家として関係者を的確に指揮するためのBOE分析を行ってほしい。
建築家・不動産投資家
KUROFUNE Design Holdings Inc. 代表取締役CEO
ハーバード大学デザイン大学院で不動産投資と建築デザインを学び、投資理論とデザインの力を融合させたユニークな不動産投資を行う。
鹿島建設入社4年目に不動産投資を開始。数々の不動産投資セミナーに足を運び、不動産関連書籍を数十冊読破。そんな中で出会ったメガ大家集団をメンターに持ち、指導を仰ぎながら不動産投資をスタートする。最初に行った東京・神楽坂での新築マンション開発では超狭小地に苦労し、辛酸を舐めつつも独自の不動産投資スタイルを確立する。現在5棟の超優良物件を保有。保有物件の中では投資額が4年間のうちに26倍になったものもある。
1982年高知県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科、同大学院卒業後に鹿島建設入社。
大学院卒業時にリゾートホテル開発プロジェクトにより早稲田大学小野梓芸術賞を受賞。
同社では国内外で建築設計や大規模な都市開発業務に従事。鹿島建設社長賞、グッドデザイン賞、SDレビュー賞などを受賞。2016年、ハーバード大学デザイン大学院(GSD)へフルブライト留学。2018年、GSD不動産デザイン学科を卒業、外資系不動産ファンドでの投資業務を経験した後、KUROFUNE Design Holdings Inc.(デザイン事務所兼不動産ファンド会社)を創業し独立。現在はハーバード学生寮生活で得た原体験をもとに、住まいと学びを融合させた国際学生寮「U Share」を開発運営する。また、慶應義塾大学SFC特任講師、早稲田大学特任講師として「不動産デザイン」について教えている。初の著書に『ハーバード式不動産投資術 資産26倍を可能にする世界最高峰のノウハウ』(ダイヤモンド社)がある。