妻の浮気が原因で離婚。突如、5歳の息子との父子家庭になった。手元に残された全財産は90万円。定時退社で保育園へ息子を迎えに行く毎日で、残業代ゼロ。年収400万円で、カツカツの生活だった。ギリギリの節約生活で、4年で1000万円を貯め、本格的に株式投資を開始。紆余曲折を経ながらも某企業の大株主になり、資産2億円以上を築いた。いまや成長し、就職した息子とふたりで焼鳥屋に行ったとき、これまでの半生を振り返り、「投資家」と「労働者」の話をした。
「サラリーだけで生きられる時代は終わった」
「億の資産をつくるにはお金に働いてもらうことだ」
「リスクをとらないと得られるものはないぞ」
離婚して父子家庭になり、全財産90万円から資産2億円以上を築いた父親が、投資術を初公開。いま息子へお金と投資の話を教える『どん底サラリーマンが株式投資で2億円』

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ビジネスモデルが気に入った
IT企業に投資

2001年の米国同時多発テロのあおりで全財産90万円となった後、4年間の節約生活で軍資金1000万円を貯めた。

さて、ここから株式市場へ本格的にカムバックするにあたり、どの銘柄に投資すべきかを考えた。

以前は投資系雑誌の推奨銘柄を買って失敗したが、4年間でそれなりに学んだ結果、SWOT分析を踏まえて自分が得意なIT分野に注目した。

1999年から2000年にかけて米国発のITバブルが巻き起こったが、2001年にFRB(米連邦準備理事会)が利上げを発表。追い打ちをかけるように米国同時多発テロが起こり、ITバブルは完全に弾け飛んだ。

しかしその後、日本では成長が見込める新しいIT系企業がポツポツと誕生していたので、そこに注目したのだ。

自分を“億り人”へ押し上げてくれる原動力になったのは、2004年に投資し始めた「サイボウズ」(東証一部・4776)。

サイボウズは企業内の情報共有ツールであるグループウェアの会社で、いまではアフター・コロナのリモートワークを先どりしたビジョンを持っている。

2004年にいまの状況を想像して投資したわけではないが、仕事関連で参加したあるセミナーでサイボウズの青野慶久現社長の話を聞いたところ、「まだ小さいけれど、面白そうな会社だな」と直感が働き、セミナーが終わって、すぐに株を買った。

当時は、いまのようにWi-Fi環境が整備されていなかったので、モデムを介してグレーの公衆電話にあったISDN回線に接続して買い注文を出した。

この前後からブログに投稿し始めた。

ブログは2002年頃から日本で話題になり始め、2004年前後から大きな流行を見せていた。新しいもの好きなので、やってみたくなったのだ。

ブログでは、投資したばかりのサイボウズについてもっぱらつぶやいていた。

父子家庭になって株式投資の勉強を始めたとはいえ、サイボウズは財務状況も株価チャートも踏まえずに直感で買ったようなもの。

買った後で遅まきながら財務や株価の動きをチェックして安心し、「日本のグループウェアでトップになる」という経営ビジョンにも惹かれてファンになり、“サイボウズ愛”をブログで発信していた。

当時、実は現在の妻と再婚するつもりで、つき合っていた。

彼女は、前妻と違って働いて自分で給料を得ていたので、「サイボウズはいい会社だから買ってみたら」とすすめたところ素直に買ってくれた。