グローバルに展開する企業の事例でよく言われることですが、製品を設計するといった時にまず考えるべきなのは、「現地化(ローカライゼーション)」ですよね。食品や調味料なら同じ製品でも提供する地域によってレシピを少しずつ変えたり、化粧品やシャンプーなどのトイレタリー製品なら処方を変えたり、といった具合です。「現地化」に関しては、特にP&Gが有名です。P&Gは処方を変えるほかに、顧客の経済状況によってパッケージの容量を少なくして安価に提供できるようにしたりと、商品の現地化を徹底しています。
では現地化を徹底すれば、顧客を幸せにし、ひいては「ずっとこの製品を使いたい」と思ってくれるような、長く愛される製品づくりにつながるでしょうか。もっと言えば、顧客の周りにいる人たち、潜在顧客の興味も引き付けるような製品を作るためには、設計段階でどのような頭の使い方をすればいいのでしょう?
「いろはす」が生み出した巨大なWin
――「水平のインパクト」という新しい頭の使い方
そうした製品づくりの好例として紹介したいのが、冒頭でも触れたコカ・コーラ社が発売しているミネラルウォーター、「いろはす」です。
この商品を手にとって、まず気づくのはボトルが薄いことですよね。今でこそ同じような薄さのボトルは増えてきましたが、初めて手に取った時は、「ん?何だこれ、柔らかいな」と多くの方が感じたのではないでしょうか。使用する樹脂を減らして環境負荷を下げるというのが薄さの理由ですが、言い換えると製品づくりの段階で作り手が顧客ののどを潤すというだけでなく、コミュニティのゴミ問題についても配慮しているということを表しています。
さらに考えてみましょう。僕のように「このボトル、面白いな」と思うと友達に言わずにはいられない、という顧客もいるでしょう。そうするとそれを聞いた人が興味を持ち、顧客に転じるかもしれません。これは今ではバズマーケティングなどと呼ばれる類の手法ですが、こうしたことまで考えながら製品の設計をしていたかもしれない。
これを俯瞰的に捉えるならば、顧客を中心としてその周りの潜在顧客、さらにその周りの一般社会に与えるインパクトを考えながら設計を行っていたということにほかなりません。いわば顧客を中心として波紋を広げるような、水平方向に広がるインパクトです。
このような「インパクトの範囲」を意識した頭の使い方は潜在ニーズを掘り起こし、新たな顧客への広がりを生むということが、この例からも見てとれると思います。