『独学大全──絶対に「学ぶこと」をあきらめたくない人のための55の技法』20万部を突破! 本書には東京大学教授の柳川範之氏「著者の知識が圧倒的」独立研究者の山口周氏「この本、とても面白いです」と推薦文を寄せ、ビジネスマンから大学生まで多くの人がSNSで勉強法を公開するなど、話題になっています。
この連載では、著者の読書猿さんが「勉強が続かない」「やる気が出ない」「目標の立て方がわからない」「受験に受かりたい」「英語を学び直したい」……などなど、「具体的な悩み」に回答。今日から役立ち、一生使える方法を紹介していきます。
※質問は、著者の「マシュマロ」宛てにいただいたものを元に、加筆・修正しています。読書猿さんのマシュマロはこちら

「いい悩み方」と精神を消耗させる「悪い悩み方」をわける重要なポイントPhoto: Adobe Stock

[質問]
「うまく悩む」方法はあるでしょうか?

「悩まぬ豚より悩めるソクラテスであれ」という言葉を知りました。

 その通りだなと思う一方で、悩んで悩んで辛いし、自分にもほとほと嫌気がさしたり、呆れたり、がっかりしたり、出来れば悩みたくないと思ってしまいます。

 勿論、ものの差はあれども皆各々悩みがあると思いますが、悩んで考えて、時に泣いてとしているとすごく体力も精神力も消耗します。妙な言い方になりますが、「うまく悩む」方法はあるでしょうか。「いい悩み方」とでも言いましょうか。今の自分の悩み方でいると、良い考えが浮かびづらいのです。

「書き出す」だけでも、だいぶよくなります

[読書猿の回答]
 悩みは「思考についての思考」「欲求についての欲求」といった、メタな表象を持つことができるヒトの能力の上に成り立ちます。

 例えば禁煙に悩む人は「タバコが吸いたい」という一次の欲求と、「タバコに欲求を感じないようになりたい」という二次の欲求(欲求についての欲求)とがコンフリクトする状態にあります。

 メタ表象は人間の認知資源をただでさえ必要としますが、次元を異にする欲求のコンフリクトは中々解消し難いので、高い認知負荷がかかり続けます。

 なので良き悩み方としては次のような方策が考えられます。

①「書き出す」など外部記憶装置を使って認知負荷を軽減する
②コンフリクトする欲求を一次と二次(場合によっては更に高次)のものに分けて構造化し整理する
③それぞれの欲求について、自分は何故その欲求を持つに至ったか、そして現在も持つに値するかを考える