高額療養費は、1カ月に患者が支払う自己負担額に上限を設けることで、医療費が家計に過度な負担とならないように配慮した制度だ。手術や化学治療などを受けて医療費そのものが高額になっても、自己負担するのは一定額までで、通常の負担割合より少ない額になる。

 75歳以上の人の高額療養費の限度額は、所得に応じて6段階に分かれているが、今回の引き上げ対象となった年収200万~383万円(単身者の場合)の人には、入院(世帯単位)の限度額とは別に、外来のみの限度額が設けられている。

 この所得層の人の外来上限特例は、月1万8000円(年間上限14万4000円)が限度額となっており、どんなに医療費が高額になっても、外来で自己負担するのは月1万8000円までだ。

 例えば、1カ月にかかった外来の医療費が15万円だった場合、単純に計算すると、1割だと自己負担額は1万5000円。2割になると3万円になると思うかもしれない。だが、このケースでは、外来上限特例が適用されるので、自己負担するのは1万8000円まででよい。

 厚生労働省の試算では、今回の見直しで2割負担となるのは約370万人で、全体の23%。1人当たりの平均自己負担額は、年間2万6000円の増加となっている。

 病気やケガをするのはつらいことだし、そのための医療費が増加するのも喜ばしいことではないだろう。だが、経過措置や高額療養費があるので、自己負担割合が1割から2割に引き上げられても、単純に医療費が2倍になるわけではない。

 負担増に対する備えは必要だが、対象となるのは一定の年金収入が見込まれる人なので、年間2万6000円程度の増額なら、家計を見直せば、なんとか捻出できる金額ではないだろうか。

 高齢者の自己負担割合の引き上げについて、不安をあおるような報道も見かけるが、見直しの内容を正しく理解したうえで、自分はどのように医療費に備えるかを考えたい。