10月30日の追加緩和は
「量的緩和」かつ「信用緩和」
10月30日、日銀は9月に続いて2ヵ月連続となる追加緩和に打って出た。中身は
①「資産買入等の基金」(以下、基金)を80兆円から91兆円に拡大
②「貸出増加を支援するための資金供給」の導入に伴って「貸出支援基金」を創設
③デフレ脱却に向けた政府と日銀の共通認識の明示
の3本柱からなる。基金拡大の内訳は「長期国債5兆円」「短期国債5兆円」「CP等0.1兆円」「社債等0.3兆円」「ETF 0.5兆円」「J-REIT 100億円」(金額は全て概数)となった。
日銀は同じ基金内で保有する資産であっても、長・短国債とそれ以外のリスク資産は買入目的が違うと考えている。前者はイールドカーブのブル・フラット化と流動性の供給を目的とした「量的緩和」、後者は市場のリスクを日銀のバランスシートに吸収することでリスク・プレミアムを抑え込む「信用緩和」が意図されている。この意味で、今回の基金拡大は「量的緩和」かつ「信用緩和」といえる。
日銀の損失は「直接的な国民負担」
と「間接的な国民負担」に
しかし、リスク資産の買入枠の拡大が計1兆円に止まったことから、市場には一層の買い増しを期待する声が根強い。一方、日銀にリスク資産の買い増しを求めるのであれば、当然、損失が発生するリスクも考慮されなくてはならない。
日銀に生じる損失は、最終的に国民負担となる。「直接的な国民負担」としては、①日銀による国庫納付金の減少、②日銀による法人税、法人住民税、法人事業税の納税額の減少、③日銀出資証券(注1)に対する配当の減少、などを経て政府の歳入が減り、ひいては国民負担(増税など)が生じる。
(注1)日銀の資本金1億円のうち最低でも5500万円は政府からの出資でなくてはならない(日銀法第8条)。