半導体不足の深刻化によって、供給面では台湾の重要性が一段と高まった。その中で、台湾半導体産業が新型コロナウイルスの感染拡大や、水、電力、人材、部材、装置などの不足に直面していることは軽視できない。(法政大学大学院教授 真壁昭夫)
半導体不足で自動車生産が減少
代わりに中古車の需要増・価格が上昇
世界全体で半導体不足が深刻化している。わたしたちの生活にもその影響が出始めた。一つの例は、半導体不足によって各国の自動車生産が減少し、その代わりに中古車需要が高まった。品目別に米国の消費者物価指数をみると、4月の中古車価格は前月比10.0%、5月は同7.3%上昇した。
半導体不足の深刻化によって、供給面では台湾の重要性が一段と高まった。10ナノメートルよりも小さい回路線幅を持つ「ロジック半導体」生産に関して、台湾は世界の92%程度のシェアを持つ。特に、ファウンドリー最大手の台湾積体電路製造(TSMC)は回路線幅5ナノメートルの最先端生産ラインを確立した唯一の企業といわれ、各国のIT、自動車などの企業が生産ラインを争奪している。
需要面に関して、今後、より多くの半導体が必要になるだろう。供給が需要を下回る状況は続きそうだ。その中で、台湾半導体産業が新型コロナウイルスの感染拡大や、水、電力、人材、部材、装置などの不足に直面していることは軽視できず、2023年頃まで世界的な半導体不足は続く可能性がある。
その状況は、微細なモノづくりに強み=コア・コンピタンスを持つわが国企業のビジネスチャンス拡大を意味する。本邦企業にとって、事業の新陳代謝を進め、高付加価値の新しいモノを創出する体制を強化する重要性は一段と増している。