勘違いその(2)
退職金は余裕資金である

 これも定年退職して退職金を受け取った人が陥りがちな勘違いである。退職金を「余裕資金」であると考えてしまうことだ。でも多くの人にとって退職金は老後の大切な「生活資金」なのである。サラリーマンをやっていると毎月決まった日には給料が振り込まれる。このお金が生活の原資であり、時々足らなくなってもそれはボーナスを充てたりしているので、生活資金の大部分は給料でまかなえているのだ。そんな状況のところへまとまったお金である退職金が振り込まれると、そのお金はすぐに使う予定のない「余裕資金」だと思ってしまうのも無理はない。

 定年した時点で金融資産を5000万円とか1億円も持っている人であれば、たしかに退職金は余裕資金だと考えてもいいだろうが、普通のサラリーマンではそんな人はまずいないだろう。だとすれば、退職金は決して余裕資金などではなく、老後の生活資金や、将来の介護・医療のための費用、そしていずれ高齢者施設に入ることになるかもしれない場合の入居費として確保しておくべきお金である。

 退職金自体が大幅に減っても生活には支障がない、というぐらいの余裕資金であれば投資に回してもいいだろうが、そうでなければ安易に退職金を投資に回さない方がいい。自分にとって退職金とはどういう意味を持つのかを十分考えたほうがいいだろう。