先週の拙稿で、経産省筋から働きかけがあったかもしれない米ハーバード大学の基金が、東芝株への投資でおそらくかなりもうけたらしいことに触れた。一般論として、不祥事を含む悪材料で株価が下落した状態は投資のチャンスになり得る(もちろん、ならない場合もある)。

 さて、あらかじめお断りしておくが、筆者は東芝と三菱電機の株式に関して、どちらについても、「売れ」とも「買え」とも言いたいわけではない。

 ただ、投資判断の対象として考えた場合、東芝と三菱電機では評価の視点が異なるので、そこを説明したい。

 何度も「悪い」と書いて東芝の関係者には恐縮だが、東芝の悪さは、直接的には株主に対して、あるいは最大限範囲を広げても投資家に対するものだ。

 不祥事は、投資家の間での「評判」には影響するが、「業績」に対して直接的に影響する性質のものではない。

 思い切って言ってしまうと、評判の悪化で株価が大きく下がるのなら、その状況は投資のチャンスである可能性が大きい。株式投資の判断は、対象企業への好意や、逆に処罰感情で行うべきものではない。

「不適切会計」問題の後の東芝は、その問題が企業価値に与えていた影響を評価して調整してしまえば、普通の投資評価ができたはずだ。なので、株価の下落局面で「買い」という判断を下せた投資家がいた可能性がある(ハーバード大学の基金がまさにそうだった可能性がある)。

三菱電機の不祥事が
投資上「厄介」な理由

 一方、今回の三菱電機の問題で投資上厄介なのは、問題が同社のビジネスに与えるマイナスのインパクトについて、規模の評価が難しいことだ。

 端的に言って販売した製品の品質をごまかしていたのだから、製品の差し替えが必要だろうし、損害賠償が発生するかもしれない。また、正しい検査体制の構築に費用が掛かるだろうし、正しい品質で作るとコストが上昇するかもしれない。さらには同社の製品やサービスに対する、ユーザーの拒否反応による追加的な損失もあるかもしれない。