それどころか、それまで保険料を滞納していた未納者が、納付猶予や全額免除の手続きを行えば、分母が減って納付率は上昇する。こうした算出方法のルールによって導き出されたのが、「納付率71.5%、9年連続の改善」という数字だ。

 納付状況は改善しているように見えても、猶予や免除を受けている人も含めると、実際に保険料を納めていない人は半数に及んでいる。今後、保険料の追納をしなければ、老後に無年金、低年金となる可能性が高く、不安要素になる。

 だが、未納者の増加がそのまま年金の破綻につながるわけではない。会社員や公務員などの厚生年金加入者も含めると、国民年金の未納者や未加入者の割合は全体の約2%。猶予や免除を受けている人は、全体の約9%。年金制度全体への影響は低い。

 そもそも、公的年金保険は、保険料を納めていない人には給付されず、受給資格要件を満たした人にしか年金は支払われない。未納者や免除者が増えても給付に影響はなく、年金が破綻するわけではないのだ。

 それよりもこの問題の本質は、猶予や免除などを続けた本人が無年金、低年金になっていくことにある。

 国民年金は、満額でも年間約78万900円。月額約6万5000円だ。これでも、年金だけでは生活していくのは厳しいものがあるが、免除期間が長くなれれば、さらにもらえる老齢年金は減っていく。

 一度、全額免除の承認を受け、本人が免除の継続を希望すると、翌年以降は申請しなくても免除を受けられる(特例による免除承認は、翌年度の申請が必要)。

 だが、いつまでも、免除や猶予を受け続けると、老後の生活の不安が増大する。

 猶予や免除を受けて、万一の病気やケガに備えられる障害年金の受給権を確保しておくことは重要だ。しかし、救済措置を利用するのは、経済的に厳しい期間を一時的にしのぐものと捉えて、コロナ禍が治まったら早めに生活を立て直すようにしたい。

 保険料の猶予や免除を受けても、10年以内であれば、さかのぼって保険料を納めることができるので、できるだけ追納して、老後にもらえる年金を増やせるようにしておこう。