テクノロジーと社会が
歩調を合わせるために必要なこと

関根 三菱総合研究所が提唱する3Xという考え方は、デジタル(DX)、バイオ(BX)、コミュニケーション(CX)という3つの革新的なテクノロジー領域によって、社会が新しい豊かさにシフトしていくというものです。山崎さんは、テクノロジーと人との関わり方は今後どうあるべきとお考えでしょうか。

山崎 テクノロジーにはメリットもあれば、リスクもあり、両刃の剣という見方ができます。私はそれに対してはポジティブに向き合う方で、うまく使えば大きなメリットを生むということに注目したいです。未来に向かって進化するテクノロジーと社会のシステムが、うまく歩調を合わせていければいいのではないでしょうか。

 そのためにも、テクノロジーの使い方が重要になってくると思います。これまでは、使い方などは考えずに、やれるところまでやってみよう、という開発の思想があったのかもしれませんが、これからは使い方と開発が共に進化することが求められるでしょう。

関根 今後、進化を期待されている技術などはありますか。

山崎 いろいろありますが、カーボンナノチューブの開発には注目しています。宇宙エレベーターのケーブルに使えるのでは、と期待されている素材ですが、今はまだ数センチというレベルの生産しかできません。これがキロ単位で量産できる技術が開発されれば、宇宙開発への大きな可能性が膨らみます。また、エネルギー関連のテクノロジーも重要です。全ての国が今の先進国レベルの生活水準になるとすると、エネルギーが地球2個分でも足りないといわれています。天候に左右されずに安定供給が可能で、しかもクリーンなエネルギー源が求められます。

 個人的な期待ですが、宇宙に行ったときに一番気掛かりだったのは家族の存在でした。コロナ禍でも、なかなか故郷の親の元に行けない、という状況があります。そこで、アバターのような技術がさらに進化して、遠く離れていても家族が近くにいるように感じられるようになればいいなと思いますね。