その上で、両路線は既存の東京メトロのネットワークを延長するものであることから、「運賃水準や乗換利便性など利用者サービスの観点や整備段階での技術的な観点からも、東京メトロに対して事業主体としての役割を求めることが適切である」と結論付けた。つまり、有楽町線と南北線の延伸を東京メトロが主体となって行うべしということだ。

 事業費は有楽町線延伸については約1560億円、南北線延伸については約800億円と見込まれている。国土交通省の調査では、費用便益比や収支採算性ともに概ね良好な数値が結果として示されており、適切な補助スキームを構築すれば、事業性に問題はないとしている。

問題となるのは
東京メトロの立ち位置

 しかし、ここで問題となってくるのがメトロの立ち位置である。東京メトロの前身である帝都高速度交通営団(営団地下鉄)は、1986年に中曽根内閣の臨時行政改革推進審議会が、「5年以内に特殊会社に改組し、地下鉄ネットワークがほぼ概成し、路線運営が主たる業務となる時点において、完全な民営企業とする」と答申したことに始まり、1987年に「地下鉄ネットワークがほぼ概成し、路線運営が主たる業務となる時点における完全民営化を目標とする」閣議決定が行われ、民営化方針が決定した。

 そもそも営団という特殊法人が設立されたのは、地下鉄建設には莫大な費用を要することから、資金調達などの面で公的なバックアップが不可欠とされたからである。そのため「地下鉄ネットワークがほぼ概成し、路線運営が主たる業務となる時点」で特殊法人の形態である必要性が無くなるというのが、民営化の大筋の流れだった。実際、民営化は南北線と半蔵門線の建設が完了し、最後の新線とされた副都心線の開業にめどが立った2004年に行われている。

 そのため、東京メトロは有価証券報告書に「営団を廃止し、株式会社である当社を設立して民営化していくという政府及び東京都の方針は、営団の設立目的である『地下鉄網の整備』に目途が立ったことから決定されたものであるという経緯も勘案し、当社は、2008年6月14日に開業した副都心線を最後として、今後は新線建設を行わない方針です」と記載している。