EFGSが全米129の主要都市の法執行機関を対象に銃撃事件の発生状況が2019年から2020年にかけてどう変化したかについて調査したところ、4分の3近くの都市で銃による殺人が増加し、約5分の4の都市で銃による傷害事件が増加したことがわかった。

 また、ニューヨークタイムズ紙も「全米の主要都市における殺人事件の発生率は2020年に平均30%上昇し、2021年に入っても上昇し続けている」と報じている。

 銃撃事件の被害者が増えているのは家庭内も同様である。コロナ禍で家族が家にいる時間が長くなったことで、虐待的なパートナーによる銃撃事件が増えているのだ。また、子どもも休校などによって家で過ごす時間が増え、銃を持って遊んだりしている間に意図せず誤って自分や他の誰かを撃ってしまう事件が急増している。

 EFGSの調査によると、2020年3月~12月の間に子どもによる意図しない銃撃事件は計314件発生し、それによって128人が死亡し、199人が負傷した。これらの犠牲者のなかには、銃を撃った本人の他に兄弟、学友、他の家族や友人などが含まれていたという。

繰り返される
大量殺傷事件

 このように銃の購入が増えると、さまざまな場所で銃撃事件が増えるが、特に怖いのは人々が日常生活のなかで大半の時間を過ごす職場や頻繁に立ち寄るスーパーなどで起こる銃乱射事件である。

 2021年3月22日午後2時半頃、コロラド州ボルダーにある大型スーパー「キング・スーパーズ」の駐車場で、殺傷能力の高い半自動小銃を持った男がいきなり発砲し、その後店内に入り、乱射を続けた。

 男は買い物客や店員など10人を射殺したが、その中には通報を受けて真っ先に現場に駆けつけたエリック・タリー警察官(51歳)も含まれていた。彼は男との銃撃戦の末に撃たれて死亡したが、その間に多くの客が店から逃げ出すことができたという。

 21歳の容疑者の男は10件の第一級殺人罪で起訴されたが、彼には過去に脅迫や暴行事件を起こした犯罪歴があった。本来なら銃規制法の身元調査に引っかかって銃を購入できなかったはずだが、それができたということは法律が機能していなかったということになる。

 現行の銃規制法の問題については後述するが、この事件が起きたボルダーの町があるコロラド州ではこれまでに何度も銃乱射事件の悲劇が繰り返されてきた。

 2012年のオーロラの映画館の事件では12人が死亡し、58人が負傷。2015年にコロラドスプリングスの病院が銃で武装した男に襲われた事件では3人が死亡し、9人が負傷した。そして全米に衝撃を与えた1999年のリトルトンのコロンバイン高校の事件では生徒12人と教師1人が亡くなり、犯人の生徒2人は自殺した。