一方、ニューヨーク州のクオモ知事が打ち出した対策も、違法で危険な銃を地域社会から排除することに力を入れている。

 ニューヨーク州は7月6日の「緊急事態宣言」の発令により、1億3870万ドル(約152億3000万円)が銃暴力の介入および防止プログラムに充てられることになった。これには州保健当局が監督する銃暴力防止局を新たに設置すること、銃撃事件のデータ提供を警察に義務づけること、州外からの銃の流入を防ぐことなどが含まれているが、特に注目されるのは三つ目のプログラムだ。

 実はニューヨーク州はカリフォルニア州などと並び、米国で最も厳しい州法の銃規制を導入しているが、それだけでは銃犯罪を減らすことはできない。州内で発生する銃犯罪の多くに銃規制の緩い他州から違法に持ち込まれた銃が使われているからである。実際、ニューヨーク州の犯罪者が使用した銃の74%は州外で購入されたものだという。

 そこでクオモ知事は対策に乗り出したわけだが、具体的には、州警察署の中に「銃器密売防止対策チーム」を新設して他州の法執行機関と協力し、銃の密売人や代理の購入者が州内に銃を持ち込もうとするのを防ぐというものだ。

銃規制法案を
可決できない理由

 このようにバイデン大統領とクオモ知事は自ら先頭に立って対策に乗り出したが、大統領や州知事の権限でできることには限界がある。違法な銃販売をより効果的に防ぐには、全米レベルですべての銃購入希望者に厳しい身元調査を義務づける銃規制法案を連邦議会で可決し、連邦法として制定する必要があるのだ。

 連邦議会はその目標を目指して長い間努力を続けているが、銃規制に関して民主党と共和党が真っ向から対立しているため、なかなか法案を成立させることができない。伝統的に民主党は銃規制に肯定的だが、共和党は憲法修正第2条を盾にして国民の銃所持の権利を強硬に主張するNRAの影響を強く受けた議員が多いため、銃規制に否定的である。

 民主党が多数を握る下院では2021年3月、インターネット通販や銃の展示即売会も含めたすべての銃購入希望者の身元調査を義務づける法案を227対203の賛成多数で可決した。

 インターネット通販で銃を購入した人の半数近く(45%)は身元調査を受けていないことに加え、米国で犯罪に使われる銃の約80%はインターネットで購入されたものだという調査結果もあるなかで、この法案は非常に重要である。ところが、法案は両党の勢力が50対50と拮抗(きっこう)している上院では、共和党議員の強い反対で可決される見通しは立っていない。

 共和党が銃規制に反対する大きな理由は、有力議員の多くがNRAから多額の献金を受け取っているからである。