模試で冷静になるべきは、むしろ親
よく模試の結果が悪いと子どもを厳しく叱る親がいますが、結果について叱るのは絶対にやめてほしいものです。たとえば、成績が落ちたのは学校行事が多くて十分に勉強できなかったからかもしれません。それなら次回は時間の使い方を改めればいいのです。また、今回はサボってしまって成績が振るわなかったのなら、そこを反省して次に生かせばいいのです。いずれにせよ、次回の好転材料にすればいいだけです。思わしくない結果や志望校判定を見て、「これじゃあ、受かりっこない!」などと平気で口にする親御さんもいますが、そんなことを言っても成績は伸びません。
模試の度に、子どもを厳しく叱っていたお母さんがいました。その子は、お母さんに叱られたくない一心で努力をしていましたが、模試の度におなかが痛くなったり、体調を崩したりしていました。それほど緊張していたのです。そのお母さんには何度も注意をしたのですが、一向に改善されず、本番を迎えてしまいました。その子は入試でも叱られる恐怖からかずっと調子が上がらず、希望の学校には受かることができませんでした。「模試で冷静になるべきなのは、むしろ親」という場合は、非常に多いのです。
そもそも一般的な模試というのは、志望校の過去問ではありませんから、その合否判定は万能ではありません。参考にする程度でいいのです。模試と本番の試験は出題範囲、傾向、分量、形式、制限時間など、あらゆる面で異なります。また模試は、すべての実施回数を通じて中学受験に必要な単元を網羅するように作られています。入試問題とはそもそも作られ方が違うのです。
では、模試はなんの役に立つのか。一つには本番の練習です。緊張しがちなお子さんには、場慣れが必要です。ですから、あがり症のお子さんは多めに模試を受験するといいでしょう。最初は緊張して実力が発揮できなかった子でも、何度も受験していると、試験の環境にも慣れてきて緊張しなくなってくるものです。また、緊張しやすい子には、第一志望校の前に受ける事前入試(千葉、埼玉、地方入試)もおすすめです。事前入試では、本命でない子も多く受けるため、大勢の受験生が集まります。しかも本物の入試です。そのような雰囲気を経験しておくのは、非常に有益です。
個別指導なら、模試の復習をお願いできる
では、具体的にどのように模試の復習をしていけばよいのでしょうか。それにも、「正答率」を使います。
たとえば上位の付属校(偏差値60以上)を目指すのであれば、40%以上の正答率がある問題は確実に正解したいところです。ですから40%以上の問題はしっかり復習しておきます。中位の付属校(偏差値50以上)であっても、50%以上の正答率の問題はおさえておきます。
まだ受験勉強をスタートしたばかりで正答率が低いなら、正答率70%以上の問題だけを復習しましょう。正答率の低い問題(難しい問題)にいたずらに時間を使っても、効率が悪いからです。計算の5点も、難問の5点も、同じ5点。しかし、すぐに結果につながるのは、計算の5点のほうですよね。正答率が高く、お子さんの復習が生きる問題に絞って解き直しをしましょう。
個別指導の良いところは、先生に模試の復習を依頼できるところです。集団塾ではそうはいきませんし、親が手伝うにしても、そもそも中学受験の算数や理科は、大人でもなかなか解答できるものではありません。
ある親御さんは模試が終わると先生に「正答率50%以上の問題だけやり直しをお願いします」「平面図形の問題だけ解き直しをお願いします」と依頼をしていたといいます。こうすることで、模試であぶり出された苦手分野を、しっかりと潰していくことができたのです。
せっかく受けた模試を「受けっぱなし」にしない工夫が、親に求められることです。
模試は本番の練習になります。できれば5年生ごろから定期的に受けて、本番のシミュレーションをしておきましょう。また、志望校が会場になっている模試があるなら、それこそ本番のまたとない予行演習になります。人気の学校での開催枠はすぐに埋まってしまいますので、スケジュールはよく確認しておきましょう。