チームのエネルギーを解き放て!
筑波大学 HAI研究室 研究員
株式会社ゼロアイデア代表取締役、株式会社〆空想科学顧問、変人類学研究所スーパーバイザー。科学文化作家、応用文学者、博士(理学、東京大学)。科学・文学・社会の新たな関係を築くべく、研究・創作・ビジネスに取り組む。編著に『SFプロトタイピング SFからイノベーションを生み出す新戦略』『プレイヤーはどこへ行くのか デジタルゲームへの批評的接近』。ほかAI学会誌、VR学会誌での連載、『ユリイカ』『現代 思想』『実験医学』への寄稿など、さまざまな分野で執筆。原作担当漫画「Her Tastes」は2020年、国立台湾美術館に招待展示された。
宮本 僕は以前から学生向けのSF創作ワークショップをやったり、企業からの依頼でSFプロトタイピングも実践してきました。未来に発想を飛ばすために「異質な言葉を掛け合わせて造語を作る」という方法は、そんな経験の中で特に効果が高かったものです。藤本さんと一緒に構築した「未来ストーリーづくりワークショップ」の出発点もこれです。
藤本 私は私でビジネス系ワークショップをやってきた経験から、ビジネス側からのアイデアをかなり盛り込みました。ワークショップを2日に分けて、「発散フェーズ」と「収束フェーズ」に分割したのもその一つです。ビジネスの現場ってしがらみが多いので、「今日は発散する日だから、何を言っても大丈夫!」と宣言しないと、最後きれいにまとめることばかり気にしてしまって議論が活性化しないんですよね。
ただ、難しかったのが、フィクションを積み重ねる面白さと、ビジネスとしての落としどころのバランスをどう取るかです。ビジネスに使えなければ意味がないし、ビジネスに縛られ過ぎると面白くない。
宮本 順番一つでアウトプットがまるで変わってくるので、要素を増やしたり、減らしたり、入れ替えたり……。ワークショップのやり方については、かなり試行錯誤しましたね。
藤本 ファシリテーションも大事です。出てきた意見を最初から否定すると無難な意見しか出なくなるので、どんな意見でもまずは褒めて、意見のフェアゾーンを広げてあげること。それがファシリテーターの大事な役割だと思います。
宮本 ビジネスパーソン向けにSFワークショップをやると、「私は頭が固いので……」とか「クリエーティブじゃないので……」って前置きする人がすごく多い。みんな創作に苦手意識があるんですよね。でも、一見凡庸なアイデアでも、発言者の背景を探れば面白い鉱脈にぶつかるし、単体でつまらなくても組み合わせると面白くなったりする。そんなひっそりした面白さに気付く視点がファシリテーターには求められます。ここは『SF思考』の本文中で藤本さんがかなり言語化してくれているので、多くの人に読んでほしいところです。
藤本 自分がファシリテーションするときは、最終的なアウトプットに「その場にいる全員のアイデアを部分的にでも残す」ことを心掛けています。実際、「俺が言った」「私が考えた」と思えることが、ビジネスへの実装フェーズで最大のエネルギーになるんですよね。チームの秘めたエネルギーを呼び覚ますという意味でもSF思考はすごく有効なんです。