未来のプロトタイプ(試作品)としてSFを創作し、そこに向かってビジネスをドライブしていく――。先が見えない時代に、目指すべき未来像やビジョンを描く手法として、インテルやマイクロソフトも採用する「SFプロトタイピング」に注目が集まっている。とはいえ、一般のビジネスパーソンにとっては、仕事とSFの接点を見いだすのはまだ難しいだろう。『SF思考 ビジネスと自分の未来を考えるスキル』は、それをブリッジする一冊だ。同書では、SF小説のような「未来ストーリー」をワークショップ形式でどんどん生み出し、それをビジネスに接続していく。その方法論が具体的かつ詳細に解説されている。編著者、藤本敦也氏と宮本道人氏が、同書の読みどころと活用方法について語り合う。(構成/フリーライター 小林直美、ダイヤモンド社 音なぎ省一郎)

「SF思考」の誕生

宮本 ついに『SF思考』が刊行されました! SFをビジネスに接続する考え方は数年前から注目され始めていましたが、本書ではそれを「SF思考」として定義し、SF作家、SF編集者、SF読者それぞれの思考法を踏まえた「3×5のSF思考」として再構築し、身に付けるための方法論まで明示しました。実践書として前例のない本になったと自負しています。

藤本 特殊なスキルのある人しか使いこなせなかった「SFプロトタイピング」を、普通の人が日常的に使えるようにブレークダウンした。いってみれば「未来創造を民主化」する一冊になりましたね。

宮本 そもそものスタートラインは、三菱総合研究所の創立50周年記念研究チームが「研究にSFを活用したい」と筑波大学に相談に来てくださった2018年にさかのぼります。藤本さんと僕の出会いもそのときでしたが、本書では、僕に対する第一印象が最悪だったことを藤本さんが暴露しております(笑)。※この事情については第3章をご参照ください

藤本 宮本さんの戦略的な挑発にまんまと乗ってしまっただけです(笑)。ただ、私は大学で数理工学をかじったこともあり「囚人のジレンマ」にはなじみがあって、どんな相手も一度は全面的に信用して乗っかろうと決めてるんです。そんなわけで「とにかく一緒にやりましょう!」となって、本書につながるSF思考プロジェクトが始まってしまったという。

 宮本さんは根っからのクリエータ―気質だから、面白くないものは面白くないとフラットに言いますよね。ビジネスサイドの私としてはそれにグサッときつつも、だからこそ率直に互いの持っているものをぶつけ合えた。それが「SF思考」として結実したのですから、面白いものです。

宮本 いや〜(笑)。僕は藤本さんを最初から面白いものに突っ走る人だと思ってましたよ! ヅカヲタ(宝塚歌劇の熱いファン)としての情熱もリスペクトしてます。初めて会った日、帰りの電車で宝塚歌劇の話で盛り上がったじゃないですか。思い返せばあの日から今まで、2人でひたすら創作論を語り合ってる気がします。