上司が絶対にやってはいけない二つのNG行動

――政治家の妻として、SHIBUYA109の店長として、居酒屋の経営者として……。多くの人たちと触れ合ってきた経験から、「人付き合いの勘」がものすごく鋭い方なのではないかなと思うのですが、部下の信頼を失わないために「上司が絶対にやってはいけないこと」は何だと思いますか?

藤﨑:思いつくのは二つですね。

まず一つは、大勢の前で叱らないこと。勤務態度やスキルなど、個人にかかわるものに関しては、一対一で言うべきだと思います。

――なるほど。公開処刑じゃないですけど、社員みんながいる前で怒鳴られるのはつらいですよね……。

藤﨑:私は、何か伝えたいことがあったとき、「人前で言うべきことなのかな?」というのは、ものすごく気をつけて判断しています。たとえば会議の場でとか、みんなの前で叱ることは絶対にしないですね。だって、そんなことをしたら人間関係が悪くなっちゃいますよ。たとえば、私がみんなの前で営業部長にガツンと怒ったら、さらにその部下の人たちと営業部長との関係がうまくいかなくなるじゃないですか。

――そうですよね。「部長が社長にすごく怒られてたけど、大丈夫かな?」と部下も不安になるかもしれませんしね。指示も出しづらくなるかもしれない。

売上が低くても、笑い声の出る明るい会議を

藤﨑:あともう一つは、絶対に後ろ向きにならないこと。とくに社長にとっては、これがいちばん大事かなと思っています。

――たとえば、どんな姿勢を心がけていますか?

藤﨑:このあいだ、うまくいかなかったプロジェクトがあったんですよ。多方面の人を巻き込んだ大きなプロジェクトだったんですけど、結果、ダメになってしまって。まあ、大失敗だったんです。

そのときに、「せっかくここまでやってきたのに」と、ものすごい憤りを感じました。でも、怒っていてもしょうがないなと思って、結局すぐに切り替えましたね。「次できることを考えよう」と。

――そこまで「後ろ向きにならない」ことにこだわっている理由は何なのでしょうか。

藤﨑:「ここで失敗したらもう終わりだ」という空気だと、社員たちもチャレンジできなくなっていくでしょう? だから会議のときも、笑い声が出てしまうような明るい雰囲気を大切にしています。売上が低くても、絶対に暗くならない。みんなが不安になりますからね。

――では、藤﨑さんはつねに前向き?

藤﨑:「ずっと前向き」とはちょっと違うかな。だって、どうしても止まるときはあるから。前を向いていても、止まってしまうときはある。トラブルが起きたりもするし、それこそコロナ禍のような、前代未聞の問題に対処しなくちゃいけなかったりもする。そういうときにずっと前を向いて進み続けるというのは難しいですよ、やっぱり。でも、「止まっても後ろは振り向かない」というのは、自分のなかで大切にしています。

――いつも明るい藤﨑さんがいるからこそ、社員のみなさんも思う存分、仕事に邁進できるんですね。

藤﨑:やっぱり、和がないと力は発揮できません。一人なんて大したことありませんから。相手を慮り、心を配って話をする。「和を持ってことを進める」こと。経営においては、これを絶対に忘れてはいけないな、といつも思っています。

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部下の信頼をもっとも失うリーダーの2大NG行動

藤﨑忍(ふじさき・しのぶ)
1966年、東京都生まれ。青山学院女子短期大学卒。政治家の妻になり、39歳まで専業主婦。しかし夫が病に倒れ、生活のために働き始める。最初はギャルブームの頃のSHIBUYA109の店長。若い店員とのコミュニケーションがうまく、また店頭ディスプレーのセンスも良く、店の売上は倍増。ところが経営方針の変更により、退職。アルバイトでしのぐが、たまたま空き店舗を見つけ、居酒屋を開業。すると料理の美味しさや接客の良さで一躍人気店に。その腕を常連客に見込まれ、ドムドムのメニュー開発顧問に。「手作り厚焼きたまごバーガー」をヒットさせ、ドムドム入社。その後わずか9ヵ月で社長に。「丸ごと!!カニバーガー」などが話題になり、ドムドムの業績は確実に回復している。テレビ朝日系「激レアさんを連れてきた。」出演で話題に。著書に『ドムドムの逆襲』(ダイヤモンド社)。
(撮影/ホンゴユウジ)

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