人間の心は過去や未来にとらわれすぎている
ナツ「どうしていまがそんなに大事なんですか?」
ヨーダ「脳のすべての疲れやストレスは、過去や未来から生まれる。すでに終わったことを気に病んでいたり、これから起きることを不安に思っていたり、とにかく心がいまここにない。この状態が慢性化することで心が疲弊していくんじゃ」
先のこと・あとのことに心を奪われた状態が当たり前になると、人間はいまここに意識を向けるやり方を忘れてしまう。しっかりと脳を休息させたかったら、まずはいまここにいる状態を体得しなければならない。マインドフルネス呼吸法はそのためにあるということのようだ。
「マインドフルな脳の状態というのは、いわば子どもや動物の心に近いと言えるかもしれんな」ヨーダは続けた。
「子どもというのは、いつも目の前のものに積極的に注意を向けとるじゃろう。これは、すべてが彼らにとっては新鮮だからじゃ。小さな子どもは何かをしている最中に、別のことをくよくよと考えたりはせん。エサを食べながら、昨日のことを後悔したり、明日のことを心配する犬もおらん。マインドフルネスというのは、あたかも初めて触れるかのように世界を捉え直し、いまここを保ち続けている子どもや動物の心を取り戻すことなんじゃよ」
たしかに、ナツの頭はいつも過去と未来を行ったり来たりしている。ナツが気にかけているのは「過ぎ去った私」と「これから来るかもしれない私」のことばかりで、「いまここにいる私」ではなかった。
マインドフルネスは心のストレッチ
ヨーダ「言ってみれば、これは心のストレッチじゃ。決まった方向ばかりに関節を曲げていたら、身体が固まってくるじゃろ。いつもと違う方向に少しだけ関節を曲げて、疲れづらい・ケガをしづらい身体をつくるのがストレッチじゃ。
人間の脳も放っておくと、現在以外のことばかりに向かってしまう。ここであえて現在のほうに意識をストレッチしてみる。こうやって疲れづらい心をつくっていくわけじゃな。
まずは1日5分でも10分でもいいから、これを毎日続けること。このとき大事なのは同じ時間・同じ場所でやることじゃ。脳は習慣を好むからな。
マインドフルネスは短期の介入ではない。もちろん、5日間の瞑想で効果があったという報告もあるが、より長くやることで効果が出てくる。いくら脳に可塑性があるといっても、脳の変化には継続的な働きかけも欠かせんというわけじゃ」
(本稿は、『世界のエリートがやっている 最高の休息法』から一部を抜粋し、編集したものです)