しかし、被告や弁護側からの申し立てを受けて審理するのは検察官だ。筆者がこれまで刑事裁判の記事で「量刑は求刑の7~8掛け」と何度か言及しているが、執行猶予は「3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金であるとき」ではないと付かない。求刑の禁錮7年に7~8掛けでは、執行猶予が付かないのだ。

 また交通事故の場合、飲酒や速度超過、無免許などがない過失罪の場合、禁錮の適用が一般的だが、懲役の求刑も可能だ。しかし検察側が懲役ではなく、あえて禁錮を求刑したのは「刑務作業は不要だが、少なくとも刑務所には入ってもらう。刑の執行停止はせず、悠々自適な余生は送らせない」という強烈なメッセージかもしれない。

無理筋を認識も
後には引けない?

 繰り返しになるが、飯塚被告は公判で拓也さんに莉子ちゃんの名前を漢字で書けるか問われ「難しい漢字」で分からないと答えた。この記事を読んでいる読者はご存じだろうが、飯塚被告は東大出身の元技官トップだ。「クサカンムリに利用の利」が分からないとは信じ難い。もちろん起訴状は目を通しているはずだが、もしかしたら通読していないのかもしれない。だとすれば、最初から事件に向き合うつもりはなかったということだろう。

 公判で明らかなのは、飯塚被告の主張は終始一貫して「自分に非はなく、原因はプリウスの故障である」ということだ。追認される可能性も0%ではなく、無罪の可能性は残されている。しかし、その可能性は極めて薄いだろう。もしかしたら、本人も外堀が埋まって無理筋だと認識しているが、後には引けないのかもしれない。

 いずれにせよ、遺族が納得できる心からの真摯な謝罪がなければ、その悲しみは癒えることがないし、真菜さんと莉子ちゃんも浮かばれないだろう。