“三車三様”の個性
部品共有性を絶妙にアレンジ

 最初にお断りしておくが、アウトバックは正式発表前ということで今回の紹介では走行体験は含まず、車両の外観、インテリア、車両スペックなどによる商品性の比較にとどめる。

 では、ボディー寸法から見てみよう。全長×全幅×全高、ホイールベースの比較は以下の通りだ。

 アウトバック:4870㎜×1875㎜×1675㎜、2745㎜(Limited EX)
 レヴォーグ :4755㎜×1795㎜×1500㎜、2670㎜
 フォレスター:4640㎜×1815㎜×1730㎜、2670㎜(ルーフレール装着)

 実際に、正面、後方、側面からの視点で、アウトバックを基準に他の2モデルと見比べていると、レヴォーグは背が低くスリムで小さく見え、アウトバックはかなり大柄だ。

 一方、フォレスターは、ガラス面が広く、背高に見え、箱物としてはフォレスターが大きく、アウトバックはスリムに見える。

レヴォーグ(左)とアウトバック(Limited EX)との比較。アウトバックはかなり大きく見えるレヴォーグ(左)とアウトバック(Limited EX)との比較。アウトバックはかなり大きく見える Photo by K.M.
ビッグマイナーチェンジしたフォレスター(左)とアウトバックビッグマイナーチェンジしたフォレスター(左)とアウトバック Photo by K.M.

 車内に入ると、ダッシュボードなどの意匠はアウトバックとレヴォーグの共通性が多く、どちらもスポーティーなワゴンという雰囲気だ。大きな違いといえば、シフトレバー周辺のセンターコンソールで、電動パーキングブレーキの操作スイッチの位置ぐらいだ。

 一方、フォレスターはドアを開けた状態での間口が広く乗り降りが楽で、アウトドアでの使い勝手が良いと感じる。運転席の着座位置も、アウトバックより高い印象がある。

 エンジンはレヴォーグとアウトバックが水平対向4気筒1.8リッター(CB18型)を搭載。最高出力(300ps)と最大トルク(300Nm)など基本性能と、変速機のリニアトロニックの第1速から第8速までの変速比も同じで、ファイナルギアの減速比が違う。なお、アウトバックの北米仕様は2.5リッターと2.4リッターターボがあるが、日本には未導入だ。

 一方、フォレスターは主力エンジンが水平対向4気筒2.0リッターのハイブリッド(FB20型)のe-BOXERで、SPORTグレードにCB18を搭載する。

アウトバック(左)とレヴォーグ。日本仕様は共に1.8リッターターボを搭載するアウトバック(左)とレヴォーグ。日本仕様は共に1.8リッターターボを搭載する Photo by K.M.

 車体は3モデルとも、スバル車の共通基盤「スバルグローバルプラットフォーム(SGP)」をベースに開発されているが、車両開発時期や商品性に応じてSGPのチューニングに違いがある。

 スバル独自の運転支援システム「アイサイト」については、新型レヴォーグから採用した新世代アイサイトをフォスターとアウトバックも採用するが、渋滞時にハンズオフ等の機能が可能なアイサイトXについて、フォレスターでは採用していない。

3モデルの個性強化の原因
背景に「レガシィ」の北米市場シフト

 さて、アウトバックは北米など海外では「アウトバック」と名乗るが、日本では先代モデルと同様に「レガシィアウトバック」を継承した。また3代目ではアウトバックで、それ以前は日本国内ではレガシィランカスターと名乗るなど、少々分かりにところがある。

 いずれにしても、アウトバックはツーリングワゴンのレガシィをベースとしたアウトドア仕様という位置付けであったことに違いはない。

 そのレガシィだが、日本の新車モデルラインアップにいまでも存在していると思っている人がいるかもしれないが、実際には北米仕様などで4ドア車として存在するのみだ。

 レガシィといえば、スバルのブランド価値を急成長させた立役者だったが、00年代中盤にスバルの商品戦略が北米市場シフトにかじを切った際、それまでの欧州テイストからアメリカ人好みへと商品特性を大きく変えた。

 そのため、旧来のツーリングワゴンを愛する日本のレガシィファンのために、“ほぼ日本専用車”という位置付けで14年に初代が登場したのがレヴォーグなのだ。

 一方、アウトバックは北米レガシィの流れをくむため、現行モデルの日本導入はアメリカでの発表から遅れること2年を要した。

 とはいえ、日本ではいま、Jeepを筆頭とするクロスカントリー系四駆やクロスオーバー四駆SUVの需要が急拡大しており、この市場にアウトバックがマッチすることは間違いない。

 スバルはトヨタ自動車やホンダなど大手メーカーと比べると、技術資源は限定的だが、今回比較した3モデルはまさに「三車三様」であり、購入者の個性がクルマ選びに出ると感じた。

【訂正】 記事初出時より以下の通り訂正します。
15段目:レヴォーグは→フォレスターは
18段目:新型アウトバックでは海外同様に「アウトバック」となり、レガシィの冠が消えた。先代(5代目)モデルはレガシィアウトバックと呼んでおり、
→アウトバックは北米など海外では「アウトバック」と名乗るが、日本では先代モデルと同様に「レガシィアウトバック」を継承した。
(2021年9月7日13:00 ダイヤモンド編集部)