6月末に突如として燃え上がった三菱電機の検査不正問題。発覚直後からトップニュースで報じられ、わずか3日後には社長が引責辞任に追い込まれた。なぜ、あれほど厳しいメディアの集中砲火を浴びたのか!?――“不祥事企業No.1”三菱自動車の広報部で危機管理を担当してきた広報コンサルタントが、三菱電機の痛恨のミスに光を当てる。(トラストワークス代表取締役 風間 武)
不正検査のスクープに対し
三菱電機はわずか3行のコメント発表
問題が明るみに出たのは6月29日夜のこと。朝日・毎日両新聞の奇妙な同着スクープがきっかけだった。
web掲載もほぼ同時刻なら、見出しも、朝日「三菱電機が性能検査で偽装 鉄道用空調、30年以上か」、毎日「三菱電機で不正検査 鉄道向け空調機器、35年以上」と同工異曲。ニュースソースもそろって「関係者」だった。
全国紙2紙のスクープを無視できるメディアはない。新聞もTVも原稿の最終締め切りまで残り時間が限られる中、後追い記事の準備がバタバタと進められたことは想像に難くない。
スクープを受け三菱電機が発表したコメントはわずか3行。「不適切な検査を行っていたことが社内調査で判明し、現在、調査を進めている」とのミニマムな内容にとどまった。実質的にはノーコメント対応だ。
既に危機管理広報の第1ラウンドのゴングは鳴っている。「製品の信頼に関わる重大な問題と受け止め深くおわびする。安全性に問題なかったかどうかも含め慎重に精査している」というような、一段踏み込んだ文章で企業姿勢を示すべきだった。準備不足と言わざるを得ない。
控えめコメントの甲斐なく、朝日・毎日両紙の6月30日付朝刊は一面トップの大扱いだった。ふたを開けて見れば他メディアも、「関係者」をソースに一斉に大きく報じた。
三菱電機が問題を穏当に収拾するチャンスは、たった一晩で失われた。
●鉄道車両向け空調装置の検査で、1985年ごろから35年以上にわたって、専用の偽装プログラムを使って組織的に不正が行われていた。
●鉄道車両のブレーキやドア等で使われる空気圧縮機でも不正が発覚。その後も、業務用空調の検査不備などが明らかとなった。
●杉山武史社長(当時)が引責辞任する事態となり、現在、全容解明のための社内調査が進んでいる。