200万円の贈与なら、51万円もトクをする!

 それでは、次に200万円の贈与をした場合を考えていきましょう。200万円の贈与をすると、箱の上の部分が200万円分削られますので、将来発生する相続税は200万円の30%である60万円減少することになります。

 しかし、200万円の贈与は110万円を超えているため贈与税がかかります。この場合の贈与税は9万円です([200万円-110万円]×10%)。

 これを踏まえると、200万円贈与をすれば、贈与税は9万円発生するものの、将来の相続税は60万円減ります。結果として、得した金額は51万円です。

 先ほどの100万円の贈与と比べてみましょう。100万円の贈与の場合に得した金額は30万円でしたが、200万円の場合には51万円。

 合理的に節税をしたいのであれば、100万円の贈与よりも200万円の贈与のほうが正解ということになります。ちなみに、同じ計算を300万円でした場合に得する金額は71万円、500万円なら101万円と、得する金額はどんどん増えます(一定の金額を超えると効果は減少します)。

 この現象が起きる要因は、「生前贈与をすると、相続税の一番高い税率で課税される部分が削られ、贈与税の税率が低い部分で税額が計算されるから」です。

 ただ、この考え方は最短最速で相続税対策をしたい方が行うものです。まだ時間的に余裕があり、ゆっくりと相続税対策をしたい人や、贈与できる人数が多い人(子や孫がたくさんいる方)は、これよりも小さい金額の贈与を積み上げていく形がよいでしょう。

 世の中で相続税のかかる人は全体の約8%です。裏を返すと世の中の92%の人には相続税はかかりません。相続税がかからない人であれば、将来、1円も税金を払わずに全財産を次の代に承継できますので、「贈与税は日本一高い税金」という常識は正解と言えます。

 しかし、相続税がかかる人からすると、この常識は逆転します。相続税に比べれば、贈与税のほうが安いのです。

「贈与税は相続税の、お得な分割前払い制度」と考えてください。消費税も増税前に駆け込み需要が起こるように、いつか払わなければいけない税金なら、税率の低いうちに払い終えたほうが得をします。

 相続税の試算をしっかり行い、適用される相続税の最高税率を把握しましょう。あなたに合った最適な贈与額が浮かび上がってきます。

(本原稿は、橘慶太著『ぶっちゃけ相続ーー日本一の相続専門YouTuber税理士がお金のソン・トクをとことん教えます!』を編集・抜粋したものです)