日本企業は自己変革を行い
期待成長率を引き上げよ

 時価総額トップ10位の顔ぶれは、世界経済の今後の展開を予想するために有用だ。今後、設計・開発と生産の分離は一段と加速するだろう。一つのシナリオとして、米国のIT先端企業はソフトウエア分野での開発力強化に取り組み、より大きな消費者の満足感の実現を目指す。そのために、デジタル家電の受託生産や最先端の半導体生産面で台湾企業の存在が高まる展開が描ける。

 わが国企業に必要なことは、新しいモノを作り出す自己変革を行い、期待成長率を引き上げることだ。近年のわが国にはソニーや日立製作所のように、リストラを進めつつ、画像処理センサや社会インフラ関連のソフトウエア開発など、モノづくりの力を生かして成長期待の高い分野での事業運営体制を強化する企業がある。半導体の部材や精密な工作機械の分野でも競争力を発揮する企業は多い。

 しかし、わが国産業全体で見ると、アップルのように最終製品の分野で世界的な競争力を発揮できる企業は少ない。どちらかといえば、わが国では過去の発想の延長で事業戦略を策定し、既存組織の維持を重視する企業が多いように思う。少子化、高齢化、人口の減少が進んでいることも重なり、わが国経済の先行きに関する悲観的な見方は多い。

 先行きは楽観できないが、人口が減少したとしてもヒット商品を生み出すことができれば、企業は成長する。新しいモノやコトの創造を目指す企業の取り組み(自己変革)が経済の期待成長率の上昇に欠かせない。

 また、2021年4~6月期のアップルの営業利益は241億2600万ドル(約2.6兆円)だ。付加価値ベースで見ても、GAFA4社の時価総額合計がわが国の株式市場を超えるのは行き過ぎている。期待成長率の高さは確かだが、主要投資家が低金利と過剰流動性(カネ余り)の環境が続くと楽観している影響も大きい。米国の金融政策の変更などによってGAFAなどの時価総額が是正される可能性は高いとみる。