自分が変わるから、
相手との「関係性」が変わる
もちろん、人間関係がすぐに改善するなどということはありません。
でも、それなりに時間はかかりましたが、徐々に彼も頑なに会社批判を繰り返すようなことが減っていくとともに、私の言うことにも素直に耳を傾けてくれるようになっていきました。そして、彼に任せている仕事にも前向きに取り組むようになり、パフォーマンスを上げてくれるようになったのです。
ただし、彼が批判精神を失ったわけではありませんでした。しかし、私が彼に欠けている視点を伝えたことで、彼なりにいろいろ考えてくれたのでしょう。以前よりも「視座」を高めてくれて、より建設的な批判をするようになっていたのです。いや、それは「建設的な批判」ではなく、「建設的な提案」になっていたのです。
その後、彼は、チームにとって貴重な戦力となり、その会社においても一目置かれるような存在へと育っていきました。これは、彼が努力したからにほかなりませんが、少なくとも、私は彼が成長する邪魔をすることはなかったと自負しています。そして、あのとき私が自分を変えようとしなければ、彼を潰してしまっていたかもしれないと思うのです。
メンバーに「伝える」のではなく、
「伝わる」ようにする
この経験は、管理職としての私に大きなインパクトを残しました。
メンバーに対して否定的な感情をもってしまうことは誰にでもあるでしょう。しかし、そのときに「変わらなければならないのは自分だ」と思えるかどうか。そして、メンバーの成長を願い、彼らが力を発揮して、幸せな仕事人生を送れるようにするためには、自分の何を変えればいいかを真摯に考える。管理職のこの「念い」こそが、本質的な意味での「ステージゼロ」なのだと思うのです。
そのためには、質の高い「内観」を続けることが大切です。
メンバーのことを一人の人間として深く考えることによって、自分のあり方と真摯に向き合う。そして、自分を変えていく。そのような「内観」こそが、管理職を成長させてくれるのです。
その重要性は、リモート環境下においてさらに重要性が増していると思います。
なぜなら、リアルワークのときよりも、メンバーとコミュニケーションをとる機会が減るからです。だからこそ、一つひとつのコミュニケーションの質を高めなければならない。そのためには、管理職が「言いたいこと」をメンバーに伝えようとするのではなく、「言いたいこと」が自然とメンバーに伝わるように、自分のあり方を変える必要があるのです(詳しくは『課長2.0』をご参照ください)。