贈与契約書がない場合、
税務調査の対象になりやすい!?

 では、税務調査対策の決定打はあるのだろうか。相続税の過少申告や無申告が疑われる件について、税務調査官は金融機関の預貯金口座を徹底的に調べる。前項でも述べた通り、「名義預金」の疑いは十中八九、税務調査となる。「名義預金」とは、口座名義人と実際に預金している人が異なる口座のことだ。

 税務調査で「名義預金」であることが確定されれば、その預金は被相続人の相続財産に組み込まれ、申告漏れとして「過少申告加算税」や悪意が認められる場合は「重加算税」+「延滞税」が追加で課される。

「過少申告加算税」は改めて納付する相続税の10%相当額となる。ただし、改めて納付する相続税が当初の申告納税額と50万円のいずれか多い金額を超える場合には、超えた部分に対して15%が課税される。「重加算税」は改めて納付する相続税の35~50%。最大で50%の加算税はかなり負担が大きい。

 それでは、税務調査に対して「名義預金」ではないと主張し、「生前贈与」の事実を証明するには、どうしたら良いものか……。最も効果的といえるのは、贈与者と受贈者で「贈与契約書」を交わしておくことだろう。書き方の例は以下の通りだ。

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(例)

贈与契約書

贈与者○○(以下、「甲」という)と受贈者○○(以下、「乙」という)は、以下の通り贈与契約を締結した。
第1条 甲は、現金○○万円を乙に贈与するものとし、乙はこれを承諾した。
第2条 甲は、第1条に基づき贈与した現金を、○○年○○月○○日までに、乙が指定する銀行預金口座に振り込むものとする。
この契約を締結する証として、この証書2通を作成し、甲乙双方が記名捺印の上、各1通を保有するものとする。

○○年○○月○○日
(甲) 住所 _________________
氏名 _______________ 印
(乙) 住所 _________________
氏名 _______________ 印

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 なお、「暦年課税」制度を利用した「暦年贈与」の場合は、毎年違う金額を書き入れた「贈与契約書」を作成して、その都度、交わしておくことだ。