海外投資家が
日本株の急上昇を支えた背景

 9月に入って、まず、海外投資家の日本株に対する見方が変化した。夏場の海外投資家などの売りの増加によって、世界的に見て日本株には割安感が出た。主要国の株価収益率(PER)は歴史的に14~17倍が適正水準といわれる。8月中旬、日経平均株価のPERは予想ベースで12倍台まで低下した。他方で、米株は史上最高値を更新した。日本株の出遅れ感が目立ち始め、日本株への物色は増えやすい状況が出現した。

 加えて、8月下旬ごろから、わが国の政治動向など複合的な要因が目先の投資家心理を強気にさせた。菅首相の退陣表明のインパクトは大きい。2013年以降の世論調査の推移を見ると、直近の政権支持率は過去最低の水準だ。退陣表明によって、新政権の景気対策を期待する投資家が増えた。その結果、夏場に日本株を売った海外のファンド勢などが一気に買い戻しに動いた。

 自民党総裁選に続けて衆議院選挙が続くことも株価上昇を支えた。1990年以降の衆議院選挙期間中、日本株は上昇した。それが、「総選挙の時は日本株が上昇する」という主要投資家の「思い込みの心理」を増やした。そうした一種のアノマリー(法則や理論から合理的な説明ができない現象)も株価上昇の一因だ。

 また、8月下旬以降、国内のコロナ感染者は減少傾向にある。楽観はできないが、その状況が続くのであれば、移動自粛は徐々に緩和され、個人消費を中心に景気は持ち直す可能性が高まる。そうした期待も9月に入ってからの株価上昇を支えた。