期待先行で上昇した株価の
今後の展開予想

 重要なのは、期待先行の相場展開はいつまでも続かないことだ。期待先行で上昇した分、株価調整の可能性はある。自民党総裁選挙で誰が当選するか、そして、衆議院選挙がどうなるかは、投票の結果を確認しなければならない。

 それらの不確定要素を背景に、海外投資家中心に徐々に利益確定の売りを入れ、今後の展開を見極めようとする動きは増えるだろう。それが現実のものになると、9月上旬のような株価の上昇の勢いは弱まる可能性が高い。

 高揚した期待の落ち着き以外に、世界経済の供給ボトルネックの深刻化の影響も軽視できない。東南アジアでの感染再拡大やワクチン接種の状況を見る限り、世界経済の供給制約は長引く可能性がある。半導体不足によって本邦自動車メーカーの生産減が長引くとの見方が増えれば、国内株への売り圧力は増える可能性がある。さらなるウイルスの変異も株価にはマイナスだ。

 一方、次期政権がデジタル化や脱炭素など、世界的に加速する環境変化に対応できると、株価の展開は違ってくるかもしれない。

 新政権が、わが国経済全体が的確に対応する政策を立案し、実行につなげられれば、わが国経済の潮流にも変化が期待できる。具体的には、エネルギー政策の転換や労働市場の流動性向上は不可欠だろう。いずれも、過去の政権が取り組みを表明したものの、十分な効果があったとは言いづらい。

 中長期的な展開を考えると、わが国経済の実力向上に向けて新政権がどの程度の力を示せるかが、長い目で見て日本株に大きく影響する。株価上昇を一時的な現象に終わらせないためにも、新政権は明確なビジョンを示し、実現することが求められている。