関西地盤のスーパー、関西スーパーマーケットの争奪戦を巡り、エイチ・ツー・オー(H2O)リテイリングが算定した統合後の関西スーパーの株式価値が焦点となっている。H2Oは具体的な1株当たりの価値を開示していないが、首都圏地盤のスーパー、オーケー(横浜市)が提示した株式公開買い付け(TOB)価格を上回るとしている。この主張をもとにしたH2O提案による影響を試算したところ、関西スーパーが抱えかねないリスクが浮かび上がってきた。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)
焦点集まるH2O案の株式価値
オーケー案と比べ「少なくとも遜色ない」
「弊社提案の方が、関西スーパーの企業価値向上及び少数株主の利益により資する」――。
首都圏地盤のスーパー、オーケー(横浜市)は9月3日、創業者の飯田勧会長と二宮涼太郎社長の連名のリリースを公表し、関西スーパーに対してTOBを実施する方針を表明した。買い付け価格としては1株当たり2250円を提示した。
一方のH2Oは傘下のスーパー、イズミヤと阪急オアシスの株式を、関西スーパーの株式と交換することで、H2Oが関西スーパーの保有比率を58%まで引き上げる。H2Oの子会社になる関西スーパーが、イズミヤと阪急オアシスを傘下に収めた後に3社を統合する。
一般的なTOB合戦では、買い取り価格を両陣営が提示して株主の賛同を募る。ところが、今回は手法が異なるため、株主にとっては価格による単純な比較が難しい。さらに、H2O傘下のスーパー2社が非上場で市場価格がつけられないことが、H2O提案の統合後の株式価値を見えにくくしている。
関西スーパー側はH2Oとの経営統合を選ぶにあたって統合後の株式価値を算定し、オーケーの提案と比べて検討したとしている。
関西スーパーは今年6月にオーケーからTOBの提案を受けた後に、社外取締役と外部の弁護士で構成する特別委員会を設置した。特別委員会はオーケーとH2Oの買収提案を比較したうえで、8月末にH2Oの提案について「(オーケーの提案と比べて)上回るか、少なくとも遜色のないもの」と評価し、関西スーパーの取締役会にH2Oとの経営統合を進めるように勧告した。
こうしたプロセスは経たものの、関西スーパーは経営統合の発表以降、統合後の1株当たりの株式価値に関して、具体的な数字を開示していない。このため、株主や投資家の間に戸惑いが生じている。
TOBを提案したオーケーも不満をにじませる。9月3日に公表したリリースで、オーケーは「関西スーパーの株主利益の最大化の観点から公正に比較検討されたのか懸念している」と表明し、「イズミヤ及び阪急オアシスは H2Oの完全子会社で非上場企業であり、市場株価といった客観的指標が欠如している。1株当たり2250 円という弊社提案と遜色ないと判断された具体的な根拠について、株主へより丁寧かつ詳細な説明を果たされることが望ましい」と訴えた。
ダイヤモンド編集部は、H2Oの提案や主張をベースに統合後の関西スーパーへの影響を調べた。すると、関西スーパーが抱えかねないリスクが浮かび上がってきた。