今度のハイアール取材のため、私は以前の取材記録を読みなおしてみた。2000年までの1990年代をハイアールの中国国内台頭期とすれば、2001年からの10年間はハイアールの海外進出期と見ることができる。
海外戦略は新ステージに
2011年、ハイアールは、旧三洋電機の日本における洗濯機、家庭用冷蔵庫事業、およびインドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナムの4ヵ国で展開する家電販売事業を買収した。その意味では、今年、つまり2012年から始まる新しい10年間は、おそらくハイアールの新しい海外戦略の展開期になるだろうと見てもいいのでは、と私は思っている。
ハイアールに対する私のこれまでの取材は、ちょうどハイアールの中国国内台頭期後半と海外進出期の前期に集中していた。前回のコラムの中でも紹介したが、2002年にハイアールに対する取材を終えて日本に帰ろうとしたとき、同社の関係者から「次回はいつ来られるのか」と聞かれ、「ハイアールが次のステップに進んだとき、また取材に来る」と私は約束した。
今回ハイアールの取材に踏み切った理由もまさにそこにあった。旧三洋電機の白物家電事業を買収し、新しい海外戦略の展開に舵を切り替えたことは、私の目には、ハイアールが次のステップに進んだシンボル的な出来事として映った。ハイアールの本社を訪問したとき、そこに貼られたハイアールの海外市場に対する3ステップ戦略を示す階段図に思わず目を見張った。
2001年、中国がWTOに加盟した。それを受けて、ハイアールはまず「走出去」つまり海外進出に果敢に踏み出した。2011年までは、おそらく「走進去」戦略時代、つまり海外市場へ殴り込みをかけ、その一員になることを目指していた時代だったと言えよう。
海外市場に足場ができた今は、目指す次の目標がさらにレベルの高いものとなった。つまり海外市場での主役になりたいというのだ。ハイアールの表現を借りれば、「海外の消費者に本当に愛されるブランドになる」ということである。