西陣織による未来の家
「ホイポイカプセル」を実現したい

 でも、本当にドラえもんで描かれる妄想が、現実世界で実現することはないのでしょうか?

 ドラえもんではないですが、漫画の『ドラゴンボール』に出てくる想像の道具に、「ホイポイカプセル」というものがあります。

 これは要するに、どんな大きなものでも入れることのできるカプセルです。連載初期の頃に主人公たちは、ここに車や家を入れて旅をしています。カプセルを投げると瞬時に目の前に家が立ち上がるのです。

 現在、多くの人は、土地に定住するという価値観をベースに生活をしています。私はあるとき、織物による「ホイポイカプセル」が実現すれば、その価値観をアップデートできるのではないかと妄想しました。

 家を三〇年、四〇年ローンで買って建てて定住するよりも、季節に応じて最高の時期にだけ各地の場所を借りて暮らすことが可能になる。しかもそれを美しい織物による「ホイポイカプセル」で実現できないかと考えたのです。

 実際、建築を定義する条件は何かを考えると、その中に「構造」と「機能」があるかということです。それでは織物の中に構造と機能を与えることができれば、西陣織による未来の家「ホイポイカプセル」が実現できるのではないかと考えたのです。

 家を建てるとき、解体するときにはゴミや瓦礫など、様々な環境への問題がでてきます。また地震があると、人は建物の構造に潰されてしまうこともあります。

 しかし、織物の家なら自由に立ち上げ、解体して運ぶことができ、ゴミを出さない。また織物の家は、柔らかいので、地震が起きても、人が押し潰されることはありません。

 いわば「第二の皮膚」としての美しい織物の家。それが実現できれば人の価値観は大きく変わると思ったのです。

 妄想で大事なのはスケール感です。「こうしたい」「こうなったらいいな」という欲求に忠実に、できるだけ大風呂敷を広げることです。そうするからこそ、「ではそのために何をやっていけばいいか」という、妄想を現実に変えるための具体的な行動計画が見えてくるのです。