「#病室WiFi協議会」が病室でのインターネット利用について、がん患者や家族、および、長期入院を余儀なくされている筋ジストロフィー患者や関係者を対象に調査したところ、回答者(243人)の約4割は「病室でインターネットを使えなかったが我慢した」と答えた。入院中は病気や治療の情報検索等もしたいはずだが、「治療費がかさむ上、さらに通信料金がかかることを、とても家族に言えないと話している」と笠井さんは説明する。

 病院が患者用の無料Wi-Fiを整備することについては、病院関係者からも患者やその体験者からも賛否両論が出ている。だが、私たちの生活でインターネットにつながっていることは日常の一部となっているため、前述の調査でも、入院中に患者個人が電波の発する機器を持ち込んでいたことがわかる。

 実は、この状況のほうが病院にとって困ることになる。

 今年5月に発表された総務省、厚生労働省と連携する電波環境協議会の病院の電波利用に関する調査結果(*2)では、回答病院の9割弱で無線LAN(Wi-Fi)が導入されていた。そのうち、患者や外部訪問者がインターネット接続できる病院は約3割だった。

 このため、患者が一般家庭向けのモバイルWi-Fi(ポケットWi-Fi)や据え置きWi-Fi等の個別のルーターを病院内に持ち込んだり、スマホのテザリング機能を使う人が増えたりしている。だが、それは病院の業務用Wi-Fiに同じ周波数のアクセスポイントが増える状況になり、電波干渉(無線干渉)を起こしやすくなる。

 電波環境協議会が作成する手引きによると、無線LAN導入病院の約半数で患者が持ち込んだWi-Fiによる電波干渉と思われるトラブルが起こっていた(*3)。例えば、近隣の病室で電子カルテや心電図モニタに不具合が起こったりするなどだ。

 これは病院にWi-Fiを持ち込んだことがよくないのではなく、病室で患者にWi-Fiを開放していないことによるトラブルだ。

 この点は、医療関係者でも気付かず、電波管理担当者に相談することなく、都合のいい場所でモバイルWi-Fi等を持ち込んでいることがあるという。

 携帯電話とWi-Fiは周波数がまったく異なるため、前述の手引き「改訂版」では音量や歩きスマホ、特定のエリアの使用は禁止などのマナーを守れば使ってよいとされている。