NTTが目指す新たな経営スタイルは
アメリカの大企業の業務スタイルに近い?

 ちなみに米国の大企業は、基本的に1番目の方式です。そもそも入社する段階で製品開発の専門家であればオハイオ、マーケティングの専門家はニューヨークというように、その会社での該当組織がある都市で雇用します。一方でキャリアが上がったごく一部の幹部社員は本社へ転勤したり、まったく別の州にある別の事業部で事業部長を任されたりします。NTTの場合も、大阪の役員が次期社長になれば当然東京に異動するわけですから、全社員すべてがしゃくし定規に転勤ゼロということではないでしょう。

 さて、このように転勤と単身赴任を廃止していくと、必然的に出張はむしろ増えるようになるでしょう。基本的にリモートで仕事をする前提である一方で、対面も重要だという思想のうえで、組織が地方分散するわけですから、対面が必要な業務に関しては出張が頻繁に必要となります。

 以上のように考察していくと、NTTが目指す新しい経営スタイルは、アメリカの大企業の業務スタイルに似たものになっていくかもしれません。社員は全国に分散して、それぞれの専門ジョブを持ちながら仕事をする。拠点は地方でも仕事は全国をカバーする関係で、出張はそれなりに増えるというスタイルです。

 この記事は、あくまで経営コンサルタントの立場でNTTの発表を読み込んだうえでの予測です。その視点のひとつとして最後に指摘させていただきますが、すべての日本企業が2020年代を生き抜くためには、DXによる生産性向上が必須だと思います。そのDXを推進していくためには巨大IT企業がその変革の手本になると同時に、自社で作ったDXのプラットフォームを顧客である一般企業へと広めていく必要があります。

 その観点で、日本を代表するIT企業であるNTTがどこまで新しい経営スタイルに移行できるかどうか、今回のニュースは日本経済の未来を占ううえでも非常に興味深いニュースだと私は思います。

(百年コンサルティング代表 鈴木貴博)