官邸官僚に振り回されないために
積極財政派のシン・経産省とも協力を

 もちろん岸田新総理の従来のブレーン的な存在の議員の入閣も必要である。加えて、閣僚を、実務を担当する存在として捉えるのであれば、それを直接的に支え、事務を実質的に分掌する副大臣や大臣政務官に、例えば、日本の未来を考える勉強会参加議員を充てるといったことも考えられよう。これが出来るのかどうかが、岸田新内閣が機能するかどうかのメルクマールとなるだろう。

 そして、安倍官邸では経済産業省が、菅官邸では財務省が幅を利かせてきたが、岸田官邸ではこれがどうなるのか?

 菅官邸で実質的な主のように振る舞ってきたとされる和泉洋人補佐官や、その取り巻きたちをどうするのか?岸田氏は、えげつないと評されるぐらいの毅然とした態度で対応しなければ、いわゆる官邸官僚たちに振り回されることになりかねない。

 その点で、今回の総裁選においては、岸田陣営は今井尚哉元首相補佐官を頼っていたと伝えられているところ、経産省主導の官邸となる可能性が高いのではないかと思われる。

 それでは安倍政権と同じではないか、と思われるかもしれない。しかし、当時と今では経産省が劇的に変化している。なんといっても6月の産業構造審議会で「経済産業政策の新機軸」によって積極財政への転換を明言し、それを主導した多田明弘官房長(当時)が今や事務方のトップたる事務次官である。

 しかも多田次官はバランス感覚に優れ、野党でも多田次官を高く評価する議員がいるほどだ。積極財政派が握る経産省ということであれば、岸田内閣はその総裁選での主張を実現しやすくなるだろうし、高市陣営の政策も取り込みやすくなるだろう。

 問題は、こうした柔軟かつ的確な対応が岸田新総理やその側近たちにできるのか、である。応援してもらった手前、実は主張が異なる長老議員たちの派閥にも配慮しなければならないだろう。

 弱々しいイメージの岸田総裁氏から、温和で柔軟だが芯が強い岸田新総理への、まさに転換を図ることが、積極財政などへの転換の前にまず必要なのかもしれない。