台湾統一へ向けて
布石を打つ習近平指導部

 9月21日、バイデン氏は、アメリカ合衆国大統領として初めて臨んだ国連での一般討論演説で、中国との争いは望まないとの姿勢を示した。

 一方、習氏は、ビデオ形式で一般討論演説に登場し、「小さなグループとのゼロサムゲーム(一方が得点し他方が失点するゲーム)は排除しなければならない」「あらゆる形の政治的操作に反対する」と返している。

 習氏が言う「小さなグループ」とは、バイデン氏が、日本、インド、オーストラリア、イギリスなど民主主義の海洋国家と連携し、中国包囲網を形成したことを意味する。

 また、「政治的操作」とは、新型コロナウイルスの起源が、中国・武漢にあるのではないかと、アメリカが中国に情報開示を迫り続けている問題を指している。

 その日、日本の主なマスメディアは、習氏の演説について、「米中両国が温室効果ガス削減で協調する姿勢を示した」と、米中の緊張緩和に焦点を当てて報道したが、習氏の言葉は細かいところまで吟味しなければ真の狙いは見えてこない。今回も演説の全文を読めば、彼の「アメリカには屈しない」という強い思いが透けて見えるのだ。

 たとえば、「世界には国連を中心とする、ただ一つの秩序がある」と述べたところなど、「国際秩序のルールメーカーはアメリカではない、一方的にルールを決めるなら、多数決を基本とする国連で却下する」と宣言したに等しい。

 また、「中華民族が追い求めているのは、平和、和睦、調和の理念。我々が侵略したり、他人をいじめたりしたことは過去になく今後もない。そして覇を唱えることもない」と語ってはいるが、その実、南シナ海で人工島を増やし、香港を完全に中国化したこと、そして今度は台湾統一に向けて着々と手を打っている点も見過ごしてはならない。