「最高難度の投資判断」ができないと
障壁は築けない

 ちなみに、障壁の数は多くはありません。に書いていますので、ぜひ、自社には障壁があるのかを考えてみてください。では、どうしたら障壁を築けるのか。障壁を築くのは大変難しい。やはり、人がやらないこと、人が嫌がることをやらなければ、障壁にはなりません

 例えば、競争相手が「なんだそりゃ?」というぐらい、腰を抜かすほどコストをかける。手間暇をかける。これをしないと、顧客に付加価値として認めてもらえません。認めてもらわなければ、障壁にはなりません。

 コストを十分にかけるというのは、経営者にとっては恐怖です。下手をすればコスト倒れになってしまいます。しかし、並みのコストしかかけていないのであれば、障壁にはならないのです。ですから、競合が腰を抜かすほどコストをかけなればなりません。

 もう1つのやり方は、リスクです。みながあきれるほど、顎が外れてびっくりするほどリスクを取っていかないと、長く続く商品にはなりません。みなが取れる程度のリスクであれば、みな取ります。その程度であれば障壁は築けません。ですが、顎が外れるほどリスクを取るということは、単なるリスクの取り過ぎになる可能性も十分にあるわけです。障壁を築くのは大変難しい。めったに築けるものではないのです。

 なぜめったに築けないかというと、経営者に乾坤一擲の大勝負が必要だからです。大勝負をするには、「そんなにコストを取って大丈夫か」「そんなにリスクを取っても大丈夫か」という自分の中の恐怖心と戦う必要がある。周囲も「社長、そんなことすると会社がつぶれます」と大反対します。これと戦わなければなりません。コストにしても、リスクにしても、最高難度の投資判断が必要になるということが、この障壁づくりの難しさ。だからこそ、障壁を築けた会社は、利益が長期持続的に続くのです。

 最近急にリバイバルした、「炎の経営コンサルタント」と言われた一倉定さんという方がいまして、とてもおもしろいことを言っているので紹介します。「社長とは、『経済に関する危険を伴う意思決定』をする人である」(注1)。凡庸な経営者は、危険を理由にして革新を避けようとします。そもそも可能性というのは、革新的であればあるほど、危険も大きいもの。ですから、危険を伴わない決定など、大した影響のない、次元の低い決定なのだから、それを偉そうに言うなということです。

注1 一倉定『新装版 新・社長の姿勢――一倉定の社長学 第9巻』日本経営合理化協会出版局、2017年

 先ほどお話しした「顎が外れるほどのコスト」あるいは「腰を抜かすほどのリスク」というのは、まさにこの「危険を伴う意思決定」ということだと思います。これをとらないと、障壁が築けないんです。