「日本企業はしっかり投資をして
長期的な経営をしている」はウソ

 では、実際のところ、日本企業はコストやリスクをとっているのでしょうか。日本の経営者はよく「我々は長期的経営をやっているんだ」とおっしゃいます。だから研究開発投資や設備投資をしているという話がまことしやかに言われるわけですが、実は学術的な研究を見てみると、主要国の中で設備投資を最も削減した企業の割合が高かったのは日本でした(図表18)。研究開発投資を最も削減した会社の数が多かったのも日本です。一般的に言われていることと実際の数字は往々にして違うのです。

日本企業のリスクテイクは<br />世界最低水準図表18

 今度は、横軸にリスクテイクを取り、縦軸に生まれたリターンを取ってみると、日本会社はリスクを取ってないということがわかります(図表19)。

日本企業のリスクテイクは<br />世界最低水準図表19

 日本はこの点線、つまり回帰線よりも下にあります。低いとはいえ、せっかく取ったリスクに比べて、取れたリターンも低い。取ったリスクに見合うリターンも上げていません。この2つの図表から、そういった事実が見えてきます。日本の起業家魂はどこに行ってしまったのでしょうか。

 さて、ここまでのお話で、複利、超過利潤が重要であることをご理解いただけたと思います。障壁を築くためには、リスクとコストをかけなければなりません。そうすることで、2σ(シグマ)の経営、つまり偏差値70の経営になれたとしたら、次は、降り掛かってくる「勝者の呪い」に打ち勝たなければなりません。