バリューチェーンのどこに強みを置くのかが重要
バリューチェーンの分析をする際に重要なのは、自社の強みがバリューチェーン上のどこにあるかを理解することです。
例えば、書籍をはじめとする様々な商品を多くの消費者にオンラインで販売できるAmazonは、販売に強みを有しています。
一方で、世界中の絵本を子どもたちに届けるというサービスを毎月定額制で提供するワールドライブラリーという会社は、その企画力に強みを持ちます。同じEコマースでも強みがまるで異なることがわかります。
業界2位以下の企業が1位の企業に追いつくために、1位の企業をベンチマークとすることがあります。しかし、単に1位の企業の行動をマネしても成果につながらないことが多いのは、それぞれの企業が持つバリューチェーン上の強みを、そもそも理解していないことが一因です。
一つの業界で複数の企業が共存できている場合、それぞれのバリューチェーン上の強みが異なっていることはよくあります。
そもそも同業界の競合をベンチマークしても日本企業が得意なQCD(品質・コスト・納期)の改善にはつながりますが、『アーキテクト思考』で述べているような、抽象化した戦略レベルでの変革につながる可能性は高まりません。
むしろ、あえて他業界の成功事例や失敗事例を抽象レベルで観察してみれば、そこにこそ変革のヒントが隠されているかもしれません。
そのためにも、コストを下げて価格競争に勝つことばかりを闇雲に追求するのではなく、顧客に認められる価値を出すためにはどうすべきか、自社のバリューチェーン上の強みを抽象レベルで把握することから始めましょう。
今回はバリューチェーンを正しく理解することの重要性について解説しましたが、次回は具体的なバリューチェーンの改革について解説したいと思います。読者からの質問に回答する形で連載を進めたいと思いますので、こちらからご質問をいただければと思います。
ビジネスコンサルタント・著述家
株式会社東芝を経て、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ、クニエ等の米仏日系コンサルティング会社にて業務改革等のコンサルティングに従事。近年は問題解決や思考力に関する講演やセミナーを企業や各種団体、大学等に対して国内外で実施。主な著書に『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)『具体⇔抽象トレーニング』(PHPビジネス新書)、『考える練習帳』(ダイヤモンド社)等。
坂田幸樹(さかた・こうき)
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者・
キャップジェミニ・アーンスト&ヤング、日本コカ・コーラ、